年末は綱島の恩師の墓参りの後、どこかで昼のランチ、その後は銭湯でひと風呂浴び、夜は日本一の商店街・銀座に行き、恩師のゆかりの店でディナーということに決めている。昨年(2024年)は、昼は自由が丘の中華「梅華」(No.100)で肉糸烩飯(ルース―ライス)を、夜は銀座「そば所よし田」(No.71)で、此岸にはいない恩師と霊感通信で語り合いながら一献傾けたのであった。
今年(2025年)も命日から一週間ばかり遅れてしまったが、先生の好きな高清水の半合瓶と線香を持って、一年ぶりのご無沙汰を侘び、般若心経を唱え、お酒をいただきながら、私の凡庸な近況を浄土(この寺浄土真宗)にいる先生に話したのであった。
さてと、年末のイベントも佳境に入り、それでは今年のランチはどこにしょうと綱島の駅で熟考したのだが、やはり今年もあのルースが頭に浮かんできてしまう。しゃーないな、今年も「梅華」にと自由が丘駅で降りることにする。頭はルースで一杯なのだが、本日は肉糸烩麵(ルースメン)にしようと、「梅華」に向かう。人気店なので本日も満員盛況で、少し待たなければならないかなどと、お女将さんの元気な姿が頭に浮かぶ。うなぎの「ほさかや」も元気に営業、居酒屋「金田」も健在と、通り過ぎ、右の路地へ。あれ、この路地だったはずだが、間違えたかと、次の路地へ。一向に「梅華」が現れないのである。どこへ消えたのか、いや何かの間違いだろう、と自分の記憶の曖昧さを怨むのである。ここは最新兵器?のGoogleマップを使うかと、まずは食べログを見る。まさかと思っていたが、ガビーン閉店という文字が入る。しかし、あの店は自社ビルだったはずだが、ビルごと消えてしまうとは思えない。今度は正確に住所表記を辿ってみる。着いた先は一番最初に曲がった路地で、オジサンの記憶に何ら間違いはなかったのであった。ただ、目の前には、「丸一酒場 自由が丘店」という今風の居酒屋が…。スマホで情報を探ってみると、4月の上旬に休業の貼り紙が、4月10日にはその貼り紙が閉店の文字に差し替えられていたという。それから8カ月後の11月19日にこの店がオープンしたという。オジサン愕然としてしまい、店の前でへたり込みそうになってしまったのである。昭和29(1954)年の創業。70年も営み、自由が丘でも屈指の老舗がこのようにあっけなくなってしまうとは、この世の無常を感じざるをえないのである。ああー大好物だったルースがこの世から消えてしまうとは、ただ茫然自失、成すすべなし、数珠を握りしめて、また心の中で般若心経を唱えるのだった。



噂では後継者問題だったのではと囁かれているが、ここも「50年問題」(No.73に詳細)だったのだろうか、息子さん(違がったのかな)たちが働いていて、こここそ安泰のように思われたが分からないものである。少々立ち上がるのに時間がかかったが、無性に腹が減ってきたので、ここは、うなぎでも食べて精をつけるかと、うな串の「ほさかや」へ。ここは若い時に通った店である。ルースがダメなら、それに匹敵するのはうなぎしかないと勝手な理屈をつけて店に入る。コ字型のカウンターで小さな店だが、幸いなことに入口に近い席が空いていた。しかし、ランチ時にここに入るのは初めてである。昼はうな丼(1,800円)、うな重(3,600円)、白焼き丼(1,600円)、そして、うな串3本(塩白焼き、きも、ひれ)セット(1,100円)をメインにしているようだ。夜は串4本になる。まずはキリンの大瓶を貰い、付け合わせの御新香をツマミに喉を潤す。串はどれも小ぶりだが、酒飲みには、これぐらいがベストなのである。夜は酒のツマミが増えるが、さすがに昼は食事が中心という感じである。オジサンも若い頃は、串のツマミでビールと酎を飲み、さーっと仕上げたものだった。ここでうな重など食べたたことがなかったが、本日はランチ、この後風呂に行かなければと、思い切ってうな丼を注文。すぐにお椀のお吸い物と丼が着丼。さすがに、この値段、うなぎは小さめだが(うな重は1枚増える)、ふっくら柔らかく関東風で良い塩梅である。タレも甘めで年季がはいっている。



ここはうな串で一杯の店と思っていたが、うな丼、うな重を食べるのにも、コスト面でもいいかもしれないと新たな発見をしたのであった。この店は「梅華」同様、この辺では老舗中の老舗のはず、是非と長く続けていただきたいものである。しかし、返す返すも「梅華」の閉店は、オジサンにとっては痛いのである。そう言えば御徒町の「民華」(何でも美味しかった)が火事で燃え、そのまま閉店してしまった時も同様の痛みがあったが、恩師もこの世からいなくなり、「梅華」も跡形もなくなり、周辺の様々なものが消失してゆく。そして私も、いつの日か、この世から居なくなるのである。 色即是空 空即是色



*補記―尚今年令和7(2025年)にNo.82で紹介した「祇園」のいなり弁当を出す会社が倒産してしまいました。「祇園」のいなり弁当は会社が変わっても、今後も販売されると思いますが、是非とも伝統の食文化を絶やさないこと切に願うのである。
店名 ほさかや
ジャンル うなぎ、居酒屋、焼酎バー
お問い合わせ
03-3717-6538
予約不可
住所
東京都目黒区自由が丘1-11-5
交通手段
東急自由が丘駅徒歩1分
自由が丘駅から64m
営業時間
月・火・水・木・金・土
11:30 – 14:00
16:00 – 20:00
定休日 第2月曜日
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。