No.119   東京都品川区大井町の「牛八」大井町本店は、あの青春の味、牛友チェーンの最後の生き残り店。いわゆるチェーン店から個人店へと逆ベクトルしたレアな*C級グルメ店なのである(十郎の懐旧食巡り編①)

 よく大井町の健康ランドに顔を出すので、街を散策する機会(故にこの投稿の第1弾No.1も大井町)が多いのだが、JR駅前のすぐの場所、年代ものの長屋風の商店街があるのだが(大井町の良いのは所々に年代物の商店街が残っていることー東小路や三つ叉等)、その一画に小体だが、店前に派手に宣伝看板を掲げるカレー屋がある。私などの年齢(50~70代の)で、特に若い時に中央線・西武線に居を構えた男性ならすぐ、「あ、牛友」だと分かると思うのだが、そうまさにあの「牛友チェーン」がそこにあるのである。最初は、何だよ牛友かと、この歳で牛友じゃないだろうと、侮ってただ通り過ぎていた。ところが衝撃的な事実を識り、健康ランドなど目もくれず、直接塒から、この店に向かったのであった。衝撃的事実とは何か、それは、この店が、最後の「牛友チェーン」の生き残り店なのだということ。そのこと耳にしたら、それは食べなければと思うのが、<誠>の人間なのである。私と「牛友チェーン」との出会いは、遡ること43年前、2年間居た中野区野方のアパートから中野区江古田のアパートに移り住んだ頃だったと思う。最寄りの駅は西武線の沼袋駅なのだが、そこに、いかにも貧乏学生向けのカレーと牛めしの店があり入店したのが始めであった。その頃から牛丼と言えば、吉野家か松屋で、それに比べると、この「牛友」は一段格下感があり、味はと問われれば、それも格下、そもそも違うものなのである。ただ量は凄く、大盛りなどを注文すると、若いといえども、最後は辛酸をなめなければという品だったのである。ところが若さと面白い、というか体験が何の身にならないもので、苦しくなるのを知りながらも、また必ず大盛りを頼んでしまう始末。もっと酷いのは、私はこれを二日酔い対策に利用し、朝起きて(昼頃起きるのだが)、酷い二日酔いの時、この店で大盛りの合い掛けカレー(スタミナカレー)を胃に突っ込み、その後アパートのトイレで指を喉に入れ…。その後はご想像にお任せします。まさにここに馬鹿あり、茶色い吐瀉物なのだが、何と、これで二日酔いの苦しさが和らぐから世の中わからないものである。そして、そんなアホでも何とか社会人として成長?するとともに、「牛友」とも卒業。その後は、たまに街で牛友チェーンの店を見つけはしたが、近寄ることはなかったのである。牛友チェーンは中央線の中野から練馬にかけての範囲内に多かったような気がする。東横線沿線にもいくつかあったらしいが、あまりそちらに縁がなかったので、私は知らなかった。

 ともかくも、社会人になってからは見向きもしなかったが、この歳になり、もう一店舗しかないと聞くと、短い期間でもお世話になったのである、最後の挨拶でもと、店に入ったのである。扉を開けると、おーっと小さい、立ち食いのカウンターだけの店、5人も入れば満杯すし詰め状態になる。開店早々だったので幸いお客は0、カウンター越しの厨房には50代ぐらいの人の良さそうなオーナーが?一人で切り盛りしている。まずは、壁に所狭しと貼って張るメニューを眺める。カレーライスや牛丼の単品もあるが、やはりここの売りは、スタミナカレー(ご飯にカレーと牛丼の頭が乗っかっているー以前は合い掛けといっていたようなー思い違いか)か牛丼カレー(牛丼とカレーライスが半々に乗っかっている)なのだろう一番目立っている。厨房の中の壁には、2キログラムのスペシャルカレーの完食者の人数(1481人ー取材時)のポスターとその上にとんねるずの汚ミシュランに登場した時の賞状。やはりここは一番人気のスタミナカレーを注文。サイズは昔を懐かしんで大、そんなアホな、65歳で大を注文する奴はおらへんと、小を注文。それと体を気遣い?サラダを注文。カウンターには塩と中濃ソース、そして、これこれ、真っ赤っかの福神漬けとショウガ、完璧な布陣である。メニューにはビールとチューハイまであるが、キャパ5人の店にお酒とはアッパレであると思いながらも、きっと注文しないし、できないだろうなと、考えていると、早速、食べでのある野菜サラダ(100円は安い)と40何年かぶりのスタミナカレーが目の前に現れる。まずは、福神とショウガをたっぷりと乗せ、カレーから口に入れる。さすがに記憶が遠いので、どんな味だったかは覚えてないが、この何でもない味だったような感じはする。辛さも余りない、ただの凡庸なカレーなのだが、ただ自宅で作る「おふくろの味カレー」とは違い、プロの味ではある。ルーは*B.C級感によくあるサラサラとドロドロの中間ぐらいである。まあ味は分かったので、今度は中濃ソース(ウスターのが良かったのだが)をドップリかけ、付け合わせと一緒にめちゃめちゃにかき混ぜて、ドライカレー?と見まがうほどの状態にして食らいつく。急にあの頃むちゃくちゃしていた青春時代のいくつかの光景がフラッシュバックのように蘇ってくる(ウソ言え)。牛丼の頭は、これも可もなく不可もなく、ただ肉には全然臭みはなかったので、名のある牛丼屋までの味ではないが問題はない。味の評価としては、悪くない、これならばジイサンが日常、時々食べても良いのではと思わせるレベルである。というか、我々の世代にこの味、合っているのかもしれない。幼少や思春期の頃に食べた味は、血に中に残り、長年立っても、その味に出会うと、何故か引き寄せられるらしいのである。(No.54)で紹介した高円寺のハンバーグと似たところがあるかもしれない。食べ終わると店は満席、一番奥にいたので、どうやって脱出したらよいか思案しなければならないほど、店は小さいのであった。

 この店は1998年に「牛友チェーン」から独立(フランチャイズ)し、その後牛友の味を継承してきたのだが、気がつくと、「牛友チェーン」は消滅し、味の継承も一店舗(個人店)だけに。普通は個人店が店舗を増やし、大資本の参加に入り全国区に、最後には詰まらない店になってしまい、あげくの果てに潰されてしまうのが落ちだが、この店はチェーン店から個人へと逆ベクトルの道を辿り、味を継承しているレアな店なのである。百灯が十灯に、そして一灯になってしまったが、灯りを消すことなく営業しているのである。まさに貴重な食文化遺産店とも言ってよい。最後のご挨拶などと侮ってしまったが、大井町に寄った時は、極力顔を出そう、そして今度は大を食べちゃうよ(お前死ぬぞ)。
 因みに、汚ミシュランに登場したのだから、店は汚いと思いきや、構えは古いが中はキレイである。2026年2月リニューアルしたばかりだそうだ、道理でね。

*グルメBとC級の違いとはー明確の定義はないがA級と違いB級グルメは安価で庶民的でローカルフードやご当地グルメなどをさし、味や満足感が重視される。それではC級グルメとは何か、B級よりもさらにくだけ、ジャンクフードや駄菓子や立ち食い系のフードをさすことが多い。往々にして自虐的でユーモラス感をこめて使われることがある。以上を踏えると、牛友のカレーはC級と判断いたしました。悪しからず。

店名      牛八(ギュウハチ)
ジャンル カレー、牛丼

お問い合わせ      03-3776-5994     
予約不可

住所      東京都品川区大井1-2-20

交通手段             
JR大井町駅より徒歩1分
東急大井町駅より徒歩1分
大井町駅から46m

営業時間             
月・火・水・木・金・土
11:00 – 01:00

11:00 – 00:00
不定休

営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。