かつて、経営する会社を廃業した後、糊口をしのぐために様々なアルバイトに精を出していた時があった。やさぐれ時代と自分では言っている。しかし、現在、そんな時代を振り返る時、それはそれで面白かったなと思うようになってきた(出版界という小さなコップの世界にいただけということに気づいたからである)。その時に学んだ世間というものが、今の自分のこの後の認識能力に大変役立っているような感じがするからである。
そんな、やさぐれ時代で一番楽しかったのはなんだろうと考える時、朝の築地市場での朝飲みブレックファーストだった。アルバイトで、多く稼ぐためには時給の高いところになるのだが、高い時給を得るためには、健全な昼間の時間帯よりも皆が寝静まった深夜に働くほうが当然良くなるのだが、私もそちらにシフトすることが多くなった。飛行場の航空便の荷捌き、沿岸の物流配送、ホテルの清掃、ビルの防災管理と様々な深夜営業に携わったが、仕事が終わった早朝に、後ろめたくなく飲むことができるのが築地市場であった。その頃は、まだ場内もあったが、ぼちぼちと移転の話が外部の私達にも届くようになったような時期だったのではないか。週2,3回は通っていたような…。故に相当築地は詳しくなったのである 場外、場内さまざまな店に顔を出した。場内では中華の「やじ満」、インドカレー「中栄」、和食「仲家」、親子丼「鳥藤」。場外では、ラーメン「井上」(火事で閉店)、中華「幸軒」、蕎麦「長生庵」、レストラン「東都グリル」等である。
そして、本日ご紹介するのが牛丼・ホルモン丼の「きつねや」である。まあ築地場外では、一番の有名店と言っても過言ではないし、築地市場のソウルフードと言っても間違いではないほど愛されている店ではと思うので、あえて紹介するまでもないのだが、そこは自称ソウルフード研究家のジジイとしては、一度はとりあげないと、と何年かぶりに築地場外へ向かったのであった。ただ、今回は、食レポはやり尽くされて思うので、食レポではなく、以前から気になっていた、両丼ぶり、どちら売れるのかを調査してみようと企みを持っての出陣と相成った次第である(こんなことは店の人に聞くのが一番だが…)。


実は、私、この店に20回以上は顔を出しているが、食べるのはほとんどホルモン丼で、後はビールで肉豆腐とホルモン煮を流し込んでいたので、牛丼は1,2回程度食べただけであった。それは、ホルモン丼が旨いので、あえてここで牛丼を食べる必然性がなかったからである。ただ、これは牛丼が不味いからということではなく、牛丼は他でも常に食べ、それと比較すると、あえて食べるまでもないと思ったゆえである。ホルモン丼単品というのは、関東では北関東では良く食べられているらしいが、東京では常に食することができる場所といえば、ホルモン焼き屋(ホルモン丼はあまりないのでは)や鉄火場(博打場)ぐらいしかないという状態である(これは関西とはドエライ違いであるーいや関西でもホルモン丼単品の店は少ないかもしれない)。私は、当然のごとく、ここでは、圧倒的にホルモン丼が優勢だろうと予想しての出陣だったのである。


さて、「きつねや」は、地下鉄築地駅から、場外の入口、新大橋通り沿いを真っすぐ1分程行き左に店を構える3坪ほどの店。しかし、今や世界有数の観光地と化した築地、この日は平日朝の10時に築地に到着したにもかかわらずインバウンド観光客で賑わい、通りはすし詰め状態。「きつねや」の前も10人程の行列。ただこの店回転が早く、5分ほどでオーダーができ、ホルモン丼とお新香を注文。幸いにも店のカウンターに座ることが出来、そして、すぐに品が着丼する。いつもながら濃い八丁味噌に絡まれたホルモンは掃除が行き届き臭みもなく結構、結構である。これぞ年季の入った(創業70年ほど)お味で、ホルモン丼の最高峰ではないか、ひょっとすると本場大阪、名古屋のホルモン丼(どてホルモン)を超えているのではないかとジジイは思うのである。まずはホルモン丼を堪能して、牛丼とホルモン丼とどちらの注文が多いかを観察。アレレ圧倒的に牛丼(7対3)が多いのである。何かの間違いではないかと思いながら、高齢者カテゴリーに入ったジジイは続けざまには食べることができないので、時間を置いて、また顔を出すことに…(時間を違えての調査が信憑性を増すのである)。



場内の跡地はどうなっているのかを見学し、波除神社に参拝し、築地本願寺に寄り、街の変貌を考える。しかし、この跡地には競技場と高層マンション、オフィス等の複合施設が出来るらしい。国際交流の拠点などといって、お為ごかしなことを言っているが、相も変わらずのツマラナイ街が現出するのだろうなと想像される。世界一の市場街でも作れば良かったのにと誰も思うところだが、場内は豊洲に移転させられ、何とも痛し痒し感が否めない。そして、そのうち場外さへもなくなり、最後には誰も人が寄らないまま、結果お台場みたいな終焉を迎えるのかもしれない(フジテレビがそれを象徴している)。東京の街は土地代だけは高くなり、投資で成功した博打うちと、富裕な外国人だけが住み、仕事のためだけに通う街と化し、エロス(生の欲動)のないゴーストタウンと化してゆくような、そんな都市の変貌が想像されるのである(このへんの問題に関しては「十郎の溶けて流れて」<十郎の別ブログ>で後述したい)。 そんな様々な勝手な妄想にひたりながら、バカは、また「きつねや」に戻ったのであった。時刻は12時で、先ほどより行列(20人ほど)が出来ていたが、またすぐに、今度は牛丼と生卵をゲットして、通り沿いの路上のイートスペースまで丼ぶりを運ぶ。何十年ぶりかの「きつねや」の牛丼。当然味さへも忘れている。勢いよく口に、どこぞで食べた牛丼の味がする。そうだ浅草の「正ちゃん」の牛煮込みの味と似ているような…。まあ、そんなことは、どうでも良いのだが、私は断然ホルモン丼の勝ちなのだが、なぜか周囲は牛丼なのである。何故か、簡単なのである。半分はインバウンドの外国人なのだが、彼らにホルモンは、ちとキツイのだろうということである(そりゃそうだ)。こんな簡単なことで結論がでることに悲しくなってしまったジジイがそこにいたのであった。日本人の方は、やはりホルモン丼を食べるべきだとジジイは思うが…。人それぞれだよな(agree to disagree)、お粗末さまでした。そんな物分かりのいいジジイじゃいかんだろう、もっともっと嫌われなければダメだよ、十郎。
店名 きつねや
ジャンル 牛丼 ホルモン丼
お問い合わせ 03-3545-3902
予約不可
住所
東京都中央区築地4-9-12
交通手段
東京メトロ日比谷線「築地」駅(1番または2番出口)から徒歩5分
都営大江戸線「築地市場」駅(A1出口)から徒歩5分
築地市場駅から295m
営業時間
月・火・木・金・土
06:30 – 13:00
水・日 定休日
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。
支払い方法
カード不可
電子マネー不可
QRコード決済不可
席数
5席(カウンター5席のみ。路上のテーブルで立って食べられます。)
全席禁煙
周辺一帯は、路上禁煙地区です。
駐車場 無し