No.35 愛知県稲沢市「オリエンタルカレー」の全国展開撤退の理由。

 「オリエンタルカレー」をご存じだろうか。懐かしい喜劇俳優の南利明の「ハヤシもあるでョー」のCMのカレーと言えば思い出す人も多いであろう。愛知県ではまだまだ根強いファンがいるのであるが、関東では今や時々お肉屋さんの隅っこに申し訳なさそうにズ~っと置いてあり、一瞬、そちらに意識は及ぶと、「あ、懐かしいなー」で終わってしまう、ただのノスタルジックな商品になってしまった感が否めないのであるが…。
 それでは何故、昭和の時代、あれだけCMソングなどで大々的に広告宣伝し、テレビやラジオの提供(「がっちり買いまショウ」毎日放送、TBS系など)もしていて知名度を上げていた「オリエンタルカレー」は、私たちの住む関東地区からは姿を消してしまったのか?まあ、即席メン「うまかっちゃん」(福岡市)よりは急速ではなかったが。
 今回はその謎に迫ると同時に、懐かしの「オリエンタルカレー」を調達して50年ぶりか? 実食し、どんな味であったかをリポートしたいと思うのである。
 「オリエンタルカレー」を販売する株式会社オリエンタルの前身は1913(大正2)年に星野益一郎が名古屋市中区大須(大須観音で有名)で、輸入食品商社の東洋食品(現・オリエンタルコーヒー商)を創業したことにはじまる。大戦中までは食品の販売を手掛けていたそうだ。
 星野は終戦後、カレーが家庭料理に普及しつつある事に着目し、当時カレーはまず小麦粉を油で炒り、カレー粉を加えてルウを作り大変手間がかかるものだった。「その手間を省き、調理を簡単に出来れば売れる」と考え(名古屋人らしい)、そして粉末状のカレールウであるオリエンタル即席カレーを商品化させるのに成功した。故にお手軽カレールウの初発は「オリエンタルカレー」なのである(知りませんでした)。個人創業の時代は妻と2人で商品をリヤカーに積み、チンドン屋先導で売り歩く商法で、あんパンが1個5円の時代に、5皿分1個35円と高価ながらも飛ぶように売れたという
 法人化後の1953年(昭和28年)からは、踊りや大道芸など様々な芸人を宣伝カーに乗せ、興行とカレーの試食会を兼ねた斬新な宣伝活動で販売網を広げてゆく。オリエンタル坊や(国籍不明の少年)のキャラクターのスプーン(当たりました)や風船を配るなどのアイデアを考案し、全国各地を巡り、その後は前述のようにラジオ、テレビの普及共に、CMを盛んに流し番組のスポンサーにもなり、その名を不動のものにしていく。
 1961年(昭和36年)に販売部門を分離し全国各地へ販売網を拡大。個人創業から工場化後も、職人による添加物が少ない粉末の自然なカレー作りに一貫してこだわり続け、1966年(昭和41年)に愛知県稲沢市へ工場移転後も受け継がれていく。
 しかし、粉末の自然なカレー作りが思わぬことに全国販売のネックになっていく。カレールーの固形化は戦後間もない頃から各社で試みられ、1952年には大阪のベル食品工業から板チョコ状のベルカレールウが発売された。1960年代に入りライバル大手もこれに追随し、やがて固形ルーが主流となっていく。カレーの固形化には、牛脂などの高融点の硬化油を用いるなど健康上の問題があったこともあり、オリエンタルは自然志向の食品に徹して固形化を行わなかった姿勢から苦戦を強いられ、1970年代 – 1990年代に掛けては地元東海エリアを除き全国的に縮小を余儀なくされていったのだそうだ。そう言えば、私の物心ついた頃は、カレー用のルーは業務用以外は皆固形ルウだったような気がする。消費者の健康を考え、頑固に固形化を阻んだことが販売網縮小とは、オリエンタル側にとっては口惜しい思いだっただろう。
 その後は販売網も余り広げず、愛知、中部地区に特化した形で、縮小しながらもオリエンタルカレーに限らず、ユニークな食品を売り続け現在に至っている。
 さて、そこで懐かしの「オリエンタルカレー」を食してみた。カレー粉で本格的なカレーを作るのには少し躊躇いがあったので、今回はレトルトで勘弁してもらうことにする。その変わりとは言っては何だが、「ハヤシもあるでョー」ということで、まずは実食。カレーから口に入れる。「あれ、何だかな」とお世辞にも旨いとは言えない。次にハヤシをスプーンに、「あれ、何だかな」と…。これと似て老舗のボンカレーの味(半年ぐらい前に食べる)と比べてみても、まだボンの方がカレーだったような。それではこれは何なのか。ただの煮込みルウと言えば良いのか、緩く濃くがなく味に締まりがないのである。私たちの舌も50年前に比べれば数段進化しているので、その当時、これはこれでイケテいる味だったのだろう。まあレトルトであって初発のカレールウはこんなにも◯◯くはないと思うが…(いやこんな感じのような気もするが)。しかし、懐かしい昭和の味といえば言えるのである。正直な感想を呟いてしまったが、やはり初発で、味を変えていないということはそれだけで素晴らしいことだと思うのである。新宿中村屋の「カレー」も、今、それ以上に美味しいカラーはいくらでもあるが、初発のカレーだということで、私たちはリスペクトして食さなければならないのである。ここの「オリエンタルカレー」もそれと同じに初発だということで食べるべきなのである。しかし、東海地方の方々には、このカレーを今でも食べ続けている数多くのファンがいると聞く、その方々においては無くてはならないのは確かなのである(まさにソウルフードなのであろう)。結論的には私がとやかく言うこともないのだが、やはり何か言わなければオリエンタルさんに面目ないと思い言わせてもらいました。
 オリエンタルさんにはいつまでもユニークな商品を作り続けていただくとともに、この初発カレーをズ~っと守り続けて欲しいものである。因みにレトルトの箱の中にプレゼンとの応募券があり、二枚送ったら一つはハズレ(台湾鶏肉飯<ジーローハン>)、一つはスプーンが当たりました。還暦になっても何かが当たるのは嬉しいものである(馬券も当たって欲しいですが)。またハズレの台湾鶏肉飯(ジーローハン)、これは大変美味しゅうございました。オリエンタルさんありがとう。

オリエンタル マースカレー レトルト版 200g×5個

新品価格
¥1,242から
(2021/10/17 00:19時点)

オリエンタル マースカレーレトルト版辛口 200g×5個

新品価格
¥1,340から
(2021/10/17 00:21時点)

オリエンタル マースカレー 130g×10個

新品価格
¥1,980から
(2021/10/17 00:22時点)

株式会社オリエンタル
住所:愛知県稲沢市大矢町高松
ホームページ:https://www.oriental-curry.co.jp/company/company_info.html