No.59 千葉県柏市の「ボンベイ」のカシミールカレーは「デリー」の伝統を裏切るカレーで残念。

 「ホワイト餃子」と「ボンベイのカレー」は昔から柏市民が愛してやまないソウルフードだと聞いたので、なるほどと思い、腰を上げ常磐線の南千住駅から柏駅に向かったのだった。「ホワイト餃子」は野田市を本拠に支店が全国にあるので、見送りとし、「ボンベイ」を訪れることにした。ここの「カシミールカレー」と「ボンベイカレー」は絶品で、何十年も柏市民を虜にしているのだそうだ。ネットで調べると、あのオジサンの大好きな「デリー」をパクったような品揃えである。そんなに柏市民に愛されているのならば、ひょっとすると「デリー上野店」(銀座店よりもこちらが上)のカシミールを越えたカシミールが存在するのかもしれないと、オジサンは相当気持ちが昂った出発だったのである。
 思えば「デリー」のカレーとの出会いは、50年はたっているのではないだろうか。母親が上野で働いていた関係で、「デリー」のお土産カレールー(カシミール、インド)を買ってきてくれ、それを食べた時の衝撃は今も忘れず記憶に残っている。今まで食べていた、具ゴロゴロのお子ちゃまカレー(それでも私の家は他の家庭よりかなり辛かった)はなんだったのかと、世間知らずの自分を恥じたものである。まさに、ソフィスティケート(洗練)とはここのカレーをして使う言葉だと思うほど、プロの技が光った味なのである。その後徐々に、本場インドのカレー店が都会には増えてきたが、その粉っぽいカレーに比べ、「デリー」のカレーのスパイス感とその深みは群を抜いているのであった。また、日本人が編み出したカレーだということが加わり、リスペクト感がさらに倍増したのである。あるインド人曰く「インドのカレーより旨いカレー此処に在り」なのである。
 さて、そんな「デリー上野店」への熱い気持ちを引っ提げて、柏「ボンベイ本店」の扉を開けたのであった。お店は小体ながらシックで瀟洒な出で立ち、入ると左右にテーブル席があり、目の前にチケット販売機、その後ろにカウンター席が6席ほどあり、その前が厨房。夕方5時に入店したが、先客1人。左側のテーブルに席をとり、チケットを購入しに自販機に、あらかじめカシミール(900円)と季節の野菜が山のようになっているボンベイカレーを食べようと決めてきたのだが、ボンベイの表示がない、売り切れかなと思ったが表示自体がないのでメニューになくなってしまったのか、わけワカメ状態だったが、しょうがなくボンベイオリジナルのマウンテンカレー(900円)のチケットを購入。追加で煮卵(100円)コールスローサラダ(200円)とビール(ハートランド500円)を購入。すぐに、コールスローとビールが到着。サラダを食べながら喉を潤す。サラダははっきり言って、ケンタッキーのほうが断然上。これは何だか悪い予感がして来る。店全体も「デリー」のような緊張感がない。テーブルに置いてある付け合わせのきゅうりのピクルスと辛玉葱も見た目活きていない。それよりも容器の掃除が行き届いていないのである。数分後カレー到着。目の前に現れたのは、おお、大好物のカシミールである。さて、ルーを少な目にご飯の上にかけ一口。あれ、味は少し違うような。「デリー」のスパイスの何かを抜いているのか、食べていくほどに、「デリー」との違いが、口の中で証明されていく。「デリー」ではないのだから、味が違ってもそれはそれ詮無き事とは思うのだが、「デリー」のカシミールを愛してやまないオジサンにとっては、何だか腹立たしい。これは<気>が抜けた、抜けさくカシミールなのだった。

 このお店の歴史を辿ると、やはり1956年(昭和31年)に創業した上野の名店「デリー」で修業した鈴木忠夫氏が1968年(昭和43年)に創業。平成20年(2008年) 鈴木忠夫氏が病気により永眠。お店はいったん休業し再開できずにいたが、平成21年(2009年) 磯野晃一氏がカフェ(住所:柏市柏2)オープン 。鈴木氏の妻馨子さんとドライカレーの提供を開始し、平成22年(2010年) カレーの店ボンベイ×caféにてカレーの提供を開始後、平成23年(2011年)現在の本店の地にカレーの店ボンベイを移転営業。現在は、本店の他、柏西口店、柏マルイ店、そして平成30年(2018年)には恵比寿店がオープンしたそうだ。
 オジサンの想像では、創業者鈴木氏がご健在までは、「デリー」の忠実な味を守っていたように思うのだが、再開後に似て非なるものになったような気がするのである。「デリー」の味を知らない柏市民なら、この味で誤魔化せるだろうが、一旦外へ出て(外と言っても30分で上野に着くのだから外と言えるのか)「デリー」の味を知ってしまったら、どう考えてもこの店に顔を出すことを止めるのではないかと思うのである。こんな激烈な批判をするのも、オジサンの愛しの「カシミール」への冒涜であり、また墓場で鈴木忠夫氏も泣いているのではと悲しい気持ちになるからである。
 果たして現在のオーナーは「デリーのカシミール」を食べているのか?それさえも疑問である。申し訳ないが連れの食べたマウンテンカレーも凡庸だったことをご報告したい。オジサンの発言を酷いとおっしゃる方がいれば、是非、「デリー」と「ボンベイ」の味比べをしていただきたい。全ての品が、言わずもがな…、であるはずである。はじめから、違う商品だと認識して食べれば別だろうが、起源は「デリー」なのだからそうはいかないだろう。ただ情けなく思うのは、「ボンベイ」の記事で、「デリー」との比較を書いている人がいないのはどうしてなのか。柏市民も上野「デリー」を食べている人は多くいるだろうに。これがソウルフードなら何とか言ってよ、柏市民。

カレーの店 ボンベイ 本店
カレーライス、インドカレー、カレー、その他
お問い合わせ:04-7164-5488
予約可否・予約不可
住所:千葉県柏市柏3-6-16 磯野ビル 1F
交通手段 
JR常磐線・東武野田線「柏」駅東口から徒歩5分。駅東口を出て、ビックカメラと丸井の間のハウディモールという駅前通りを直進して、駅前通り交差点は角がPRONTOで斜め向かいがうどん市、その向こうが柏神社です。交差点のその先バス停「柏駅入口」の真前です。柏駅から366m
営業時間:11:30~21:30(L.O)
日曜営業・定休日:不定休
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。