No.96 山形県内陸部「水かけご飯」。止(や)められない、止(と)まらないデンジャラスなソウルフードを十郎レシピで紹介-とんかつはダメダメよ

No.30で紹介した「ひっぱり」のほかに山形内陸部には、もう一つ簡易なソールフードがある。それは「水かけご飯」と称されるものである。常々私は、この簡単簡易めしこそソウルフードと言われるものになる一番の近道だと思っている。人間は怠惰なのである。毎日のルーティンである食生活にそんな情熱を込めて、真摯に取り組んでいたら、仕事にも支障をきたしてしまうだろ。あんまり労力をかけずに、それでいて、そこそこイケルものが食べられるなら、それに越したことはないない。そして、それに飽きがこないが伴えば、完璧なソウルフードなる可能性があるのである。例えばインスタントラーメンは、現在では、日本人のソウルフードと称されているが、「安くて、早く、旨い」という三拍子が揃った典型的な例ではないだろうか。だが、注意しなければならないのが、こういうものに限って、食べ過ぎると余り体にはよくないということである。まあ、何でも過ぎることは、心(頭)にも身体にもよくないのであるが…。

この美しい輝き

 今回ご紹介する「水かけご飯」も、とかく食欲のなくなる夏場(私は全然なくならないですが)にはピッタリの一品で、素晴らしいのは食欲がなくてもいくらでも腹に収まってしま魔法の食べものなのであるが、これが欠点で、決して体にはよくない。それでもという覚悟が必要な食べ物なので注意していただきたい。それでは「水かけご飯」とはいかなるものなのか。分かりやすく例えれば「お茶漬けの冷たい水」版である。実は、オジサン、「バター飯」と「水かけご飯」は全国どこでも普遍的に食べられているものだと思ったが、そんなもの食べてたことない民がいることに、ぶったまげたのである。「水かけご飯」はまだしも「バター飯」を食べたことがないなどは、生きているのに可哀そうだなと(大げさかな)。また「水かけご飯」の方は、食べたことがないのは頷けるが、もったいないと思うしかない。食べてみてよーと叫ぶしかない。

 それでは、食べたことのない人に「水かけご飯」レシピをご紹介したい。まず、余ってしまった炊飯ジャーの白飯(電源を切って1日置いておいた方がベストなのだが)をザルにあけ、水でよく洗う。よく洗い流した白飯を冷水と氷を入れた丼に移し、それで完成。冷蔵した白飯は、30秒くらいレンジでチンをしてザルにいれる。そして、お茶漬けのように、お好きなご飯のお供を用意して、サラサラと食べるだけである(紹介するほどでもなかった)。昔はレンジなどないのでご飯は常温保存しかなかったため、腐りかけで硬くなったご飯を如何にして美味しく食べるかということで編み出されたものだと思うのだが、如何か。そのため今や「水かけ」にして食べる必要はないのだが…。たまに食べると、特に夏に食べると結構なのである。

 私の今回のお供は、山形内陸部のぺちょら漬とおかかネギ、新潟のめし喰らえ(味噌)。ぺちょら漬など聞いたことがない方がいるだろうが、これは山形県人でも聞いたことがない人が多くいるマニヤックな漬物で、ナスを独特の汁に付け込んだ(鷹の爪が入っているので少しピリ辛)もの。オジサンが山形の母親の実家へゆくと必ず食卓に出てくる漬物で、伯母のぺちょら漬は最高に旨く、何度もおかわりをした記憶が残っている。東京で買えるのは銀座の山形のアンテナショップ「おいしい山形プラザ*」だけだが、やはり袋にずーっと漬かっているので、ナスも柔らかくなりすぎていて、伯母のとは似て非なるものだが、市販するにはこの味が限界なような気もする。因みに山形「だし」なるものが最近よく販売されているが、これもほんまもんの「だし」とは似て非なるもので、オジサンにとってはこの出回っている「山形だし」は「だし」ではない。なんだか話は別の方角にそれてしまったが、基(もとい)この「水かけご飯」、もっと普遍的になってよいと思うのだが、はしたないと言えばはしたない食べ物なので、お里がよろしい人が食べるものではないわな。因みに芸能界では、さすがの大食漢だけあって、美味しいものをご存じな俳優・渡辺徹がこの「水かけご飯」が好物で、何ととんかつと一緒に食べていたというのだから、これはいかんがなと思うしかない(だが、とんかつ茶漬け「新宿すずや」があるのだからこれもアリか)。早死にしてしまうのも肯けるが、食べて食べて食べまくって死んだのだから幸せだったのだろう(合掌)。話がまたそれてしまったが、オジサンはひょっとすると、山形名物冷やしラーメンも、この「水かけご飯」からの発想で考えられたものと推測するのだが穿ち過ぎか。アイデアがアイデアを生む。最高ではないか。胃にはよくはないが一度はお試しあれ。

おいしい山形プラザ
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ぺちょら漬商品 

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