No.10 東京都大田区蒲田の「鳥久」のからあげ

 空前の「からあげ」ブームである。
 飲食店が閉店すると、その後「からあげ屋」というパターンが多くなってきた。日本人はこんな「からあげ」が好きだったかなと、私などは首を傾げてしまう。そして、テリー伊藤までが、あの実家の築地「丸武」の何でもない卵焼きを引っ提げ、セットで「からあげ屋」をやり出す(名前を貸しているだけだろうが)始末、もうそろそろ「からあげ屋」も陰りを見せだす前兆かなと思ったりする。この「からげ屋」ブームも長くは続かないなと思ってしまうのが、かつての様々なブームが起こり、跡形なく消えていった多くを見ているおじさんの性(サガ)なのかもしれない。
 どころが、どっこい消えてなくならないものもある。それが今回ご紹介する蒲田「鳥久」の「からあげ」である。「何だか想い出したように、無性に食べたくなるんです」と蒲田住人の多くがその中毒性に犯されているらしい。ここは十郎、食べたことがないので好奇心にそそられネットで調べて見ることに、ここ「鳥久」は創業3(1928)年の鶏肉屋(やはり、ポッと出とは年季が違う)。今は「からあげ+お惣菜」と「弁当」で有名な店である。ここの弁当はテレビ局のロケ弁では一、二を争う人気で、ゲイタレントのマツコを筆頭に多くの芸能人にファンがいるそうだ。それでは「からあげ」と人気の弁当を食べなければと心に決め蒲田まで足を運ぶ。
 鳥久本店は蒲田駅西口から10分ほどで、東口駅前にも店舗がある。どちらで買っても同じだろうと、駅に近い東口店(通人には味が違うそうだが、ほんとうか?)に行く。目指す鳥久東口店はちょうど駅の対面(トイメン)の路地にあり、店のガラスのディスプレーを眺めると、何とほとんどの弁当が売り切れ。「からあげ」はあったが、とりあえず「からあげ」だけをゲットして帰る。聞けば、ここの人気弁当は13時までには売り切れてしまうそうで、朝6時30分開店だと言う。ところが電車の中でひょっとすると、ここは弁当を買って、それを報告しなければ片手落ちになるという気持ちが起こると同時に、そんなに人気弁当なら食べなければと欲が出て、二日後に今度は大雨の中、朝9時に店に着くように電車に乗る。今度は何とか人気の「からあげ弁当」「特製弁当」を買い家路に向かう(蒲田まで自宅から40分ほどだからこんなマネができると共に仕事以外のものに関する自分の集中力に感心する)。
 ここの「からあげ」は白い粉が覆い(写真参照)、スタンダードなからあげとは一目で差異が分かる。この「からあげ」実は竜田揚げなのである。それよりどれだけ片栗粉をまぶすとこんな真っ白な粉が噴き出すことやら。私はかねがね、「からあげ」は鶏肉(むね肉ともも肉、ブロイラーと放し飼いの違いはあるだろうが)が問題ではなく、まわりの衣の旨さだろうと思っている。ここの衣は確かに冷めているのにサックっという食感と香ばしさが残りグッー。鶏肉はそれほどジューシーではないが、柔らかく文句なしである。弁当のことを書くべきだったがあいにく紙数が尽きてしまった。この弁当もなかなか凄みがあり、蒲田のソウルフードなのは間違いない、機会があれば詳しく書きたいと思っている。因みに大森に同名で同じ形式の店があるが支店関係はないそうである。ただ周辺の通人には<蒲田派―むね肉>と<大森派―もも肉>があり、どちらが旨いか論争があるそうだ、何とも愉快だ。

●弁当お品書き
 http://torikyu.co.jp/shina.html

蒲田鳥久 本店
住所:東京都大田区蒲田1丁目8−12
電話:03-3731-5888
公式Webサイト
http://torikyu.co.jp/honten.html

蒲田鳥久 東口店
住所:東京都大田区蒲田5丁目16−1
電話:03-3738-5736
公式Webサイト
http://torikyu.co.jp/higashi.html