上尾市というより、大宮市、さいたま市も含めた埼玉県中央部のソウルフードと言われるのが、このスタカレーである。
この地域に何店舗かある「好好(にゃんにゃん)」(現在では暖簾分けしただけでチェーン店ではない)では、ほぼスタミナラーメンとスタカレーを売りにしているが、今回はどちらかというとスタカレーのほうがソウルフルと思うので、こちらを紹介させていただく。
そして、何故、上尾市愛宕山店のスタカレーなのか、第1にスタカレーの生みの親の店長がいる店、第2にこの店のスタカレーが一番旨いということらしいので、ここをチョイスさせていただいた。スタカレーとは、始めはスタミナラーメン(スタミナラーメンは1970年代半ば、大宮市にある矢島商事が経営する、大宮駅西口前の「漫々亭」(閉店)で誕生したメニューで元々は麻婆麺<マーボメン>から試行錯誤の末にできた一品)ありきなのであるが、醤油ラーメンにひき肉とニラ、ニンニクと生姜に豆板醤を加えた片栗粉のトロミ餡を載せたもので、豆腐抜きのマーボー豆腐といえば分かりやすいのではと思う。その餡をラーメンに載せたのがスタミナラーメン、ご飯の上に載せたのがスタカレーである。それならばスタミナ丼で良いのではと思うのだが、このスタカレーはカレーのように平皿に載せてあるので、スタカレーとネーミングされたそうだ。何だか単純だなと思うだろうが、商いとは、こんな単純なことが、売れるか売れないかを左右する境目で、ひょっとするとスタミナ丼であったら、ここまで地域に親しまれるソウルフルなB級グルメにはなっていなかったのではないだろうかと思うのだが、如何であろうか。
早速、上尾市に向かう。私にとっては、いつも千葉県習志野市とゴッチャになり(どうでもいいけど似てませんか)、何の縁のない街だが、東京にこんなに近いというのも初めて知り自分の無知を反省したしだいである。
上尾駅の東口を出て、丸広(マルヒロ)デパートを越え、国道164号(旧中山道)を右に大宮方面へ。氷川鍬神社、愛宕神社を右に見、亀歩きで30分ほど(普通の人は10分)、道路を越えて左手にお目当ての「好好」の黄色い看板が目に入る。シャツは汗でベトベトである。11時30分開店だということで、それに合わせたつもりが、すでに11時45分。店内は一巡目の客で一杯。外は6人ほどが列を作っている。こりゃ何時間待つことやら、汗まみれと気落ちとで愕然とし列の尻尾へ。しかし、案外開店が早いのか15分ほど待つと店内へ。食べ終わった連れ同志のお客のほとんどが、「旨かったね」と相槌を打っている。
これは期待できるぞと店内を見渡す。カウンター6席と、右にテーブル席が4つあり、厨房ではスタカレーの生みの親、店主の山内和人(この道50年)さんが愛用の赤いバンダナをして一心に鍋を振るっている。スタッフは他に丁稚さんかそれともアルバイトか?若い男性二人が手伝っている。連れと二人カウンターの端に案内され、左を見ると飲み物が入った冷蔵庫。飲み物はセルフですと表示。埼玉県は2日後「緊急事態宣言」発令だから酒はOK。ビールを取り出し、何か月ぶりかの外飲みに感動、2本も開けってしまった。餃子とスタミナラーメンとスタカレーを注文、待つこと15分、お目当ての品が目の前に。まずは餃子をビールと共に、オーっとこの餃子私がダメなアジア系香辛料(ハッカクかパクチーか? 後ほど調べると「ウーシャンフェン」<五香粉>が入っているらしい)が入っている。好きな人は堪らないらしいが、私にはこの匂い、昔の田舎の便所の香水のようにしか思えないのである。食べられないことはないが少しネガティブな気持ちになってしまう。気を取り直して、スタカレーを一口。No.21「からし焼」の相似形で、味は想像できたのだが、思ったより辛味は優しく洗練されている。「からし焼」より万人向けかもしれない。
「からし焼」と「スタカレー」の広がりの違いはここにあるのかなどと考えながら、かなりの量だが、旨くて一挙に食い尽くす。スタミナラーメンは麺とご飯の違いだけなのだが凡庸感が否めなかった。各店舗、微妙に味が違うらしいので味比べに回ってみるのも良いかも。しかし。ダ埼玉には、他にもB級グルメ的なものがソウルフルに地域に根好き、安価で食べられ続けている土地で、決して侮れない県なのである(後に紹介)。スタカレー600円もコスパ抜群である。店を出ると、このカロリーどうやって消費するかを考え、罪の意識を抱きながらまた亀歩きで駅に向かったである。ヤレヤレ。しかし、上尾暑いな。
「娘娘(にゃんにゃん)」 上尾愛宕店
住所:埼玉県上尾市愛宕3-7-17
TEL:非公開
営業時間:11:30~14:30、18:00~20:30(月曜日のみランチ)
定休日:火曜