No.37 東京都台東区千束の立ち食い蕎麦「山田屋」の細めん、ひもかわ、僕きつね。

 コアな立ち食いファンなら必ず訪れたことがあるだろう、立ち食い蕎麦「山田屋」。立ち食い蕎麦は地域性よりも、通りすがり性で本領を発揮するのだが、この「山田屋」通りすがりの場所にはなく、店の周りは平日など人っ子一人歩いていないと言っても過言ではない場所にあるのである。それで長年暖簾を掲げ続けているということは、説明するまでもなく、どんな立ち食い蕎麦屋だかお分かりいただけるのではないだろうか。街は寂びれてしまっているのだが、暖簾を潜ると店は黙々と蕎麦、うどんを啜る地域のお客さんで充満しているのである。どんな辺鄙な場所でも確かなものを出せば、お客さんを必ず掴むことが出来ることを証明している典型のような店。この店の近くには、「ねぎどん」(台東区入谷)という奇妙な店名(お母さんが二人で営んでいる)の立ち食い蕎麦屋があるのだが、そこと人気を二分している店で、私は「山田」派なのだが。両方共通りすがりではなく、まさに地域に密着した立ち食い蕎麦屋といえるのではないかと思う。
 因みにこの周辺は浅草橋周辺と常に立ち食い蕎麦聖地論争を起こしている地区でもあるのだが、聖地と名乗るのならばこの地区が相応しい気がするだが…。
 まず始めに、この場所、外部の人には到達するのが中々困難な場所なのでご紹介すると、東京メトロ日比谷線「三ノ輪」駅を出て、国際通りを浅草方面に向かい10分ほど歩くと、左に暮れのお酉様で有名な浅草鷲神社が見えてくる、お酉様の二つ手前の道を左に曲がるとすぐ右側にそば、うどんと書いた白い看板が見える。まあ、迷ったらその辺の地元民らしき人に聞けば知らない人はいないで聞いてちょんまげなのである。
 それでは、この店の特徴は、蕎麦は4(蕎麦粉)+6(うどん粉)ぐらいだろうと想像される。汁は普通の関東風で醤油が立った濃いめである。しかし、種の天ぷらが常に揚げたてで、また種類が多いこと、何故常に揚げたてなのか、お客さんがひっきりなしにくるので作り置きができないのである(凄いでしょ)。常にご主人が油の目の前で黙々と天ぷらを揚げている。そして、この店、蕎麦、うどんの他にきしめん(ひもかわ)、細うどんと麺がバリエーションに富んでいて、きしめん(ひもかわ)好きのオジサンにはタマラナイのである。
 人気の種は、ゲソ天で、これはNo.24「一由」蕎麦で紹介したインパクトの強いゲソ天とは対照的で優しく衣が柔らかい、しかし、好みは分かれるだろう。私は「一由」派である。またここのキツネが、ほどよくダシに沁みていて美味しいのである。色々と種があるので試してみたいのだが、私はゲソ天とキツネを入れて食べるのが定番になってしまっている。
 さて、本日は11時30分到着2か月ぶりである。もっと早く顔を出せばよいのだが野暮用があり時分時になってしまった。店内は左にL字のカウンター5席、右に一字のカウンターが7席、奥に2人掛けテーブルが一つ。テーブルの1席を残し満席状態。自動販売機で少し悩んだが、いつもはきしめん(ひもかわ)だが本日は細うどんを注文(細うどんは裏メニューなので、蕎麦うどんのチケットを買って口頭で店の人に言って下さい)。種はゲソ天とキツネとそれにソーセージ天を加える。相も変わらず冒険出来ず情けなや。しかし旨い、何なのだろう、天種以外は何の変哲もないのだが、この店の活気が美味しくしているような気がする。毎日食べにくる人もいるだろう。私も家が近くならば、毎日は無理だろうが週3日はお邪魔しているのではないか。地元密着型立ち食い蕎麦屋、ファストフードとはこのような地元密着がベース(基本)なのではないかと考えさせられる店でもある。ただ、高齢の夫婦と娘さん?でやられているようだが、今後のこの店の将来のことが気になってしまった。娘さんが婿さんでももらい引き継ぐことができればよいのだろうが、それが出来ないとなると突然閉店もあると、要らぬ老婆心が働いてしまうのである。
 一度4年前ぐらいに長期の閉店があったのでなおさら心配になってしまうのである(閉店前はもっと活気があったような)。巷のお店の後継者問題は深刻なのである、などと考えながらもお気楽バカオジサンは自転車を跨ぎ、食べたカロリーを減らすために鼻歌まじり(本日は大瀧詠一の「夢で逢えたら」)にスポーツセンターに向かったのであった。

山田屋 そば、天ぷら、うどん
住所:東京都台東区千束3-33-9
交通手段 :都営バス「竜泉」バス停から徒歩1分。このバス停には東武浅草駅、日暮里駅からもアクセス可能。地下鉄は日比谷線三ノ輪駅より徒歩10分(バスだと1停留所)
三ノ輪駅から673m
電話:03-3874-7215
営業時間:月〜金7:00〜14:00
定休日:土曜・日曜・祝日