No.82 静岡県伊東市の居酒屋「まるたか」の「うずわ定食」、そこには食べ終わると素直に「ごちそうさま」と頭を下げているオジサンがいたのであった。(青春18きっぷ日帰り旅②)

No.81から続く)さて有意義な社会科見学をして東海館を出ると、ランチをとるのに絶好な時間となり、目的の「ねごめし」をと、先ほど休みではないかと不安になった「五味屋」へ戻る。ここからはほんの数分、大通りを出ると視界に入るところにある。遠くからでも、先ほどはシャッターが閉まっていたが、明らかに違う気配。気が楽になり足も軽くなる。店の前に到着し、入口の前で様子を伺うと開店は11時30分、腕時計は20分を表示。開店10分前かと、その瞬間、私の後ろにゾロゾロと人が並び出す。さすが人気店である。ということは私が一番乗り。なんだか、先ほどの「ぐり茶の杉山」といい、「東海館」といい、絶妙なタイミングで自分の前に現れるなと、ニヤッとしながら開店を待ったのであった(これは○○がついているということか)。この「五味屋」伊東ではかなりの有名店らしく、入口にはかなりの数のマスコミ関係の取材記事と、少し不安になったのはタレントのサインがこれでもかと窓に貼ってあるところである。その不安とはタレントのサインが所狭しと露呈されている店に、私の経験値から碌な店がないことが多かったことであった。ここはそんなことはないだろうと、少なからずの期待を持っての入店と相成った。

 店は正面に大きな10席ほどの四角のテーブル、左にカウンター5席、奥に入ると小上がりがあり、横長の部屋に6人ほど座れる卓が三つある。造は古民家風。私と連れはカウンターの端に席を取る。注文は客が全部席に座ってからとのこと。とりあえず瓶ビールを注文し臨戦態勢に入るために、メニューを眺める。豊富な海鮮の品々がバリエーションにとんだ形で提供されている。注文の品は昨日から決めていたのだか、何だか心が揺らぐのである。しかし、ここは普段優柔不断な私も、男が一旦決めたこと、揺らぐ気持ちを抑えて、「ねごめし」*1(1,365円)と「おまかせ丼」(2,600円)で通したのであった。品が到着するのを待ちながら周囲を見渡すと、またまた店内もこれでもかとタレントのサイン。店長、よっぽど田舎者なのだなと苦笑いながらビールで喉を潤しながら、妙なことに気づいてしまう。あれ、あれだけ並んでいたのに蓋を開けると客は3割ほど、人気店のランチ時なのだから、どんどんと客が押し寄せてもと思うのだが…。それは東京と人口が違うのだからと嫌な予感を打ち消しながら目の前のテレビのニュースを眺める。と周囲の客の話が耳に入ってくる。聞いていると、お客はほとんど私と同じ、観光客とは言わないが外者風なのである。ヤバい、ここは一見さんの店かなと、タレントサイン的中かなと襲ってくる不安を連れとの会話で濁していると、品が目の前に現れる。まずは「おまかせ丼」(エビ、ウニ、ホタテ、マグロ赤身、アジ、サケ、スズキ、ハマチ、イクラその他計18種)が到着。オーマイ凄いのである。ネタの種類といい、新鮮さといいい、これでこのお値段という代物(写真参照)。次に「ねごめし」登場。こちらは、性質上見た目はそれほど良くないが、「おまかせ丼」を見てしまうと、こちらもコスト以上のものがあるのだろうと、今までの不安感は何のその、今度は店に対する信頼感が募ってくるのである(変わり身の早い日本人バカです)。

 さて実食と、まずは連れの「おまかせ丼」の刺身を少々、そして「ねごめし」のたたきにわさび醤油を少々かけ口に入れる。ハイボールとレモンサワーを追加注文し、黙々と頬張る二人がいたのであるが、何故なのだろうか、刺身もたたきも、それほどでもないのである。こんなに新鮮に見える刺身なのに何故なのか(新鮮過ぎてダメなのか?) 「ねごめし」も最後は出汁を入れて茶漬けのように啜るのだが、申し訳程度の魚出汁で、これもパットしない代物。その代わりご飯の量は多く、若者なら喜ぶだろうが熟年にはきついのである。また「おまかせ丼」くらいは酢飯にしてもらいたいものだがそんな気遣いもない。隣の連れに小声で「どう」と聞くと、「ぜんぜん○○〇〇〇」とのこと。やっぱりか、私だけではなかったと安心してしまう始末。値段が安いのだからと言ってしまえばそれまでだが、これなら築地の方が…。という残念無念のランチタイムだったのである。しかし、オジサンの直感もまだまだ鈍ってはいなかったと、逆に自分を褒めてやりたい気持ちになったのであった。こりゃあ若者や味音痴にはいいだろうが、年季の入った批評性をもった舌を誤魔化すことはできませんよ、と思いながら店を出たのである。

 さて〇〇気もここまでかと、これからが心配になったが、ここは気を取り直して、第2の目的地、道の駅伊東マリンタウンに併設されているシーサイドスパ(2023年4月から「朝日の湯 シーサイドスパ」へ変更)へ。超がつくほどサウナ好きのオジサンは、最近、銭湯のサウナばかりで、本格的なのにはとんとご無沙汰しているので、本日はゆっくりと相模湾でも眺めながら、整え、夜のソウルフード探しに備えるつもりなのである。バスで5分、道の駅に到着。まあーいるはいるはの人だかり、駅前の閑散が嘘のような風景。これが地方の実態かと、車には乗らなくなったオジサンは地方には住めませんと思いながらスパに突入したのである。受付入館料(1,000円)とタオルセット(300円)を支払い、ロッカールームへ。浴場はそんなに大きくなくサウナ1、水風呂1、ジャグジー、ヌルメとアツメの風呂が1つづつと横長の露天が1つという構成。前には相模湾が広がり、ロケーションはなかなかである。サウナと水風呂4回を繰り返し、露天風呂につかり、海を眺めガーデンチェアーに寝そべりながら、啄木の詩を口ずさみながら(東海の…)、整うを待ったのであるが、眠気が増してきて整う前に寝てしまう。浴室を出ても、まだ眠いので、休憩室を探し、本格寝してしまい、起きたら既に時計は15時を過ぎている。焦ったオジサンは「ととのった」という訳の分からないドリンクを飲み、スパを後にするのであった。道の駅のお土産はまだまだ人だかり、冷かし程度に店を覗き、帰りのバス停に向かう。
 ところがである、駅までのバスは15時で終了とのこと、ガビーンと力を失ったのである。駅まで歩いて15分という、何とも中途半端な時間、タクシーを拾おうかとも考えてが、さすが地方の車社会そもそもフリのタクシーなるものが存在しない。諦めて歩くことにする。オジサンの亀歩きだと30分は掛かるがなと、先ほどのスパは何だったのかと、汗まみれになり海岸沿いを天然記念物の大室山の頂を望みながら伊東駅に向ったのであった。まあこれはこれで、オツだったでやんすが…。しかし、〇〇が良いのやら悪いのやら伊東の日帰り旅も佳境に入り、最後のディナーを残すのみとなったのである。

 さて、オレンジビーチを過ぎると、駅までは5分、やっと伊東の駅前街に辿り着き、時計は既に18時を過ぎていたのである。まあ、指定列車に乗るわけでもない、青春切符の旅なのだから急ぐこともないのだが、何せ東京上野まで鈍行では2時間ぐらいはかかるのだから、都内で飲んでいる感覚とは如何せん違くなるのは当然、早速第3の目的地「うずわ定食」*2を出す居酒屋「まるたか」を探しウロウロするのであった。途中海鮮屋「徳造丸」でアジと金目の干物をお土産に買うも、数分ほどでお店を発見し入店。間口は狭いのだが、奥に長く、一番奥のテーブル席に通される。客の入りは既に6割ほど。元気なお店である。メニューも豊富で、その但し書きがユニークなのである。例えば、鯖カツにはただのサバです、とか、やきとりには、そのものズバリおすすめしません、という何とも身も蓋もないコピーが連なり、よほど変わったオーナーなのだなと想像してしまうのである。

 まずはまずはプレミアムモルツ生(560円)を注文。静岡おでんを注文すると、セルフということ(1人前5ケ650円)で、大根、玉子、黒はんぺん2、つみれ、をチョイスし自らテーブルに。塩ラッキョウ(420円)と御通しのイワシの南蛮漬け(300円)で、まずは、本日の旅の疲れを癒す。料理は全てしっかりしていて結構である。何だかなんでもイケルような気がしてくる。こうなれば、交通費が浮いた分贅沢しようと、伊豆ならばこれしかないと、金目の煮つけ(2,680円)を注文。飲み物はプレミアムホッピーセット(580円)に連れは伊豆みかんハイ(490円)。何とこの店レモンサワーが置いてないのである。オジサン理由が分かったが、あえて答えを言いません。他にも注文したい肴があったが、ここは「うずわ定食」(1,280円)を食べなければいけないので我慢する。金目の煮つけも、文句の言いようがないお味でグッドと親指を立てる。

さてと、今宵は〆と相成り、目的の「うずわ定食」を注文。店は既に満杯。前の大テーブルの集団は、子供連れでご飯を食べにきたようで、お目当ては「うずわ」のようで、黙々と子供が「美味しい美味しい」連発しながら食べている。普段なら居酒屋へ子供など連れてきやがってと、怒り心頭になるところだが、今夜は許そうという気分で、それを見ながら焼酎「直七」ロック(580円)をチビチビ舐めていると、「うわず定食」が目の前に。かつおのたたきに青唐辛子を絡ませて食べる漁師めしなのだが、前述の「ねごめし」と同じで最後にお茶漬けにして食べる、鰻のひつまぶしのような代物。皿一杯にかつおのたたきが広がり、見た目は余り良くないが、早速実食。まずはたたきをそのまま口に入れる。臭みもなくほどよく粘りがあり、イケルのである。次に付け合わせの青唐辛子と絡め、ワサビ醤油で食す。青唐辛いがツマミでも十分良い、辛いのがダメな人は、たたきだけでも十分良かろうが、やはりこの青唐が、この料理の<肝>のように感じる。次に白米の上に乗せ一緒に、これはご飯のお供としても親指立てである。最後に定員さんに出汁をお願いすると、やかんで出汁を運んでくれ、残ったご飯の上にかけてくれる。それを啜ると、また出汁も結構なお味で親指立て。満足な一杯で「ごちそうさま」と頭を下げているオジサンがいたのであった。やはり〇〇がついていたと(ハトヤのおかげ)、笑みを浮かべながら店を出ると、外に入店待ちのお客が数十人。本日はお盆明けの平日の月曜日、こりゃ、<ほんまもんや>と駅に向ったのであった。伊東のソウルフードになるような予感アリアリなのである。因みにこの店、伊東の海鮮問屋直営の店で、姉妹店として近くに「まるげん」という店があるそうだ。さてと、忙しない東京に帰るべーか。

*1「ねごめし」
 漁師めしと言われ、魚のたたきに生姜やネギを乗せた伊豆半島名物料理。途中から味噌を溶いた出汁をかけて、お茶漬けとして食べるのが定番。 決まったレシピがないため、お店ごとに異なる味だという。
*2「うずわめし」
 宗田鰹(そうだかつお)は背中に渦のような模様があることから、伊東の地では”うずわ”と呼ばれています。 そんな「うずわ」を青唐辛子と一緒に”たたき”として食べるのが「うずわ定食」である。最後の出汁を入れお茶漬けにして食べるのが特徴。

五味屋(ごみや)
ジャンル 海鮮、海鮮丼
予約・お問い合わせ:0557-38-5327
予約可
住所:静岡県伊東市湯川1-12-18
交通手段:JR伊東駅から徒歩5分程 駅前いちょう通り沿い
伊東駅から310m
営業時間
11:30~14:00
18:00~21:30
日曜営業
定休日 木曜日・第3水曜日
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

シーサイドスパ
所在施設: 朝日の湯 シーサイドスパ道の駅 (道の駅伊東マリンタウン内)
所在地:〒414-0002 静岡県伊東市湯川571−19
電話:0557-38-1811
https://ito-marinetown.co.jp/

居酒屋まるたか
ジャンル 海鮮
予約・お問い合わせ:0557-38-0105
予約可
住所:静岡県伊東市湯川1-16-6
交通手段
伊東駅徒歩1分
伊東駅から134m
営業時間
ランチタイム 11:00~15:00(L.O14:30)
ディナータイム 17:00~23:00(L.O22:00)
日曜営業
年中無休
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。