No.61 神奈川県川崎市中原区小杉町「丸仙」の支那そばは、あるようでない珠玉の一杯

 武蔵小杉というと、昔はオジサンには長閑な下町的なイメージがあった。しかし、数年前から駅前開発でタワーマンションがゾクゾクと出現し、ついこないだは地盤が弱いところに、マンションを作ったばかりに、浸水に見舞われるという始末。人の不幸は蜜の味ではないが、内心「ザマーミロ」と思った人間もいたのではないだろうか。タワーマンションのいかにも成金的な、高見に人を見下ろすようなイメージが、悲しいかな貧乏人に溜飲を下させ、そんな言葉を呟かせたのでは(イヤですね)。
 しかし、オジサンにはそんな気持ちはないが(ホントか)、経験上(近しい人間が住んでいた)、なぜタワーマンションなどに好んで住むのかという疑問はあるのである。外の眺望なのか(こんなもの日常暮らしていると、ほとんどどうでもよくなる)。心理的にハイソな気持ちになれるのか(今時、他人はそんなのハイソだと思わん)。分からないのでるが、つい「〇カとケムリは高いところが好き」、あ、これが答えかと思ってしまったりするのである。安全だと言われてはいるが、地震の揺れは半端じゃなく、朝の通勤時のエレベーターは10分待ち(いやそれ以上も)。時が立ち、子供、孫の代になって、マンションが老朽化しても建て替えはかぎりなく無理に近い(新宿副都心の高層ビルを見よ)、出ようと思っても買い手は現れず(始めから分かるだろうに)、60年後ぐらいには鬼怒川のホテルのような廃墟のタワーマンションがゾクゾク現れ、社会問題になること必至だろうなと、もうこの世にはいないオジサンでも心配になってしまうのである。
 すみません、話は長くなってしまったが、そんな醜く変貌してしまった武蔵小杉で40年変わらず、一杯のかけそばならず一杯のラーメンを売っている店が本日訪れた「丸仙」なのである。東京全体にも、このようなラーメン屋が少なくなってしまい、それこそ街の開発とともに消滅した、似たようなラーメン屋は沢山あったのではないだろうか。ところが、どっこい、この「丸仙」は生きているのである。そして、まだ街で一番人気のラーメン屋なのである。武蔵小杉駅から元住吉方面に法政通りを歩くこと3分で到着。家系の雰囲気のような派手な黄色を色調にしているカウンター10席ほどの小さな店。15時と時分時を避けたが、行列はないが店内いっぱいで、20分ほど待たされる。お客さんが数人出ると、チケットを買い、カウンターの奥へ行けと促される。販売機でビール(中瓶550円)と支那そば(750円)と連れはねぎみそ(850円)にトッピングバター(100円)のチケットを購入、一番端へ座る。すぐにビールと突き出しのメンマが運ばれ、それを食べながら」喉を潤す。カウンターでは二人の中年男性がキビキビと働いている。一人は黙々とラーメンを作り、もう一人の愛想のよい人(店長か)が外のお客を仕切っている。
 この活気は旨いものが出てきそうな雰囲気、狂いはない。
 15分で支那そばが到着。おー、私の大好きな濃いめのスープ、チャーシュー2枚にメンマ、そして大き目の海苔が1枚乗り、西方や九州人が不味いという定番の東京中華そば。まずはレンゲでスープを、鳥に魚介(鰹節)二重出汁で、よい醤油の返しを使っている。オジサンには魚介が邪魔だが、後に調べると入手困難の名古屋コーチンをベースに豚ガラ・野菜などを濁らないように6~7時間じっくり煮込んでいるそうだ。魚介も何か入れていると思われるが店側の情報には書いていなかった(おかしいな?)。仕込みから手間暇かけ、カゴザルを使わず、創業以来、竹柄そば揚げで麺をあげている(そういえばそうだったかな、気づかなかった―失礼)。麵は中太縮れ麵。連れの相伴にあずかり食べたが、いくつかの味噌をブレンドしているのだろうが、コクと深みがあり癖になる味、こちらもファンが多いのだろう、特に若い学生風のお客は断然味噌を注文していた。満足の一品を食べさせてもらって店を出ると、こんな時間(16時)なのに行列ができていた。自宅の近くにあれば、一週間に何度か顔を出していることだろう。こんな醜悪になった街にもまだまだ救いがあるのだと、住民のためにも長く続いて欲しいとオジサンは駅に向かったのであった。
 しかし、もうタワーマンションは終わっているだろう、いつまで建て続けるのやら、厭世的な気分になるのはオジサンだけなのかな。

ラーメン丸仙(ラーメンマルセン)
ジャンル:ラーメン、餃子
電話:044-722-2827
住所
神奈川県川崎市中原区小杉町3-66
武蔵小杉駅南口から徒歩5分
法政通り武蔵小杉駅から373m
営業時間
月、火、水、祝日
    11時~15時  17時~22時
金曜日:11時~15時  17時~23時
土曜日:11時~23時  通し営業
日曜日:11時~22時  通し営業
※スープなくなり次第終了
定休日:木曜日
公式HP:https://www.ramen-marusen.com/