No.88 愛知県名古屋市中区「スガキヤ(Sugakiya)」大須赤門店で、愛知県最大のファストフードチェーン店のラーメンを喰らう(名古屋めし食いつくし編③)

 名古屋2日目は、熱田神宮に参詣し、お昼は愛知で一番有名なのではないかと思われる明治6年創業の「あつた蓬莱軒」の本店か神宮前店で「櫃(ひつ)まぶし」でも食べようかと、計画を立てたのは良いが、参拝する前に、その計画は頓挫する。この店、まずは入店する前にチケットをもらい、時間指定されるのだが、そのチケットをもらうために朝から長蛇の列ができているのである。これはアカンはと、とりあえずは神宮内の「宮きしめん」で、もりきしめん(No.91で紹介)を食べ、空腹を軽く満たし、参拝後はすぐに大須に向かったのであった。


 大須は、浅草観音、津観音と並ぶ日本三大観音の一つとしても数えられる観音霊場・大須観音(創建元亨4<1324>年、寺号は北野山真福寺寶生院)の門前町で、地元の人には昔から下町的雰囲気で親しまれている場所である。しかし、私が最初に訪れた30年前は、浅草同様、人が余り寄り付かない場末感がある町で、この先どうなってしまうのだろう感があったのだが、これも浅草同様、現在、復活し、大層な賑わいだということなので、ぜひとも30年振りに冷かしにいきたい場所の一つだったのである。

 地下に潜るのが好きな名古屋人、そのせいか地下鉄の充実度も凄く、熱田神宮西駅から地下鉄名城線で四ツ目の上前津駅へ。あっというまに大須に到着。地上に出て、商店街方面(ふれあい広場)に向かう。驚かされたのは、日曜日とはいえ人の多さにである。30年前とは大違い、私の記憶違いなのか、違う町を訪れているように感じるのであった。まずは観音様にご挨拶と東仁王門通り西へ真っすぐ亀歩きで歩く。大須に似つかわしくない(失礼)オシャレな店も増えている。歩いている年齢層もあの頃とは違い若いのである。こんな風に町は変貌するのだなと落ち着かないオジサンがフラフラしているのであった。東仁王門通りから仁王門通りへと入ろうと門前町通りを渡ると、左手に大層賑わいの商店に出くわす。「みたらし団子新雀(しんすずめ)」の看板が。大須観音名物の団子を売る有名な店である。1969年から創業55年の老舗で、おばあちゃん直伝のみたらし団子ときなこ団子の二つのみを売る潔い店(と思いきや袋入りの煎餅やえびせんも販売しておりました)。現在は、少し強面で不愛想な(当たり前だが、こんなところで愛想をふりまいていられないだろう)おばあちゃんの息子さんが? 必死に団子を焼いている。ここは食べなければと列に並ぶが、すぐにみたらしときなこを1本ずつゲット。みたらしは、餡ではなく醤油の焼き団子で、所沢や狭山(No.12)のに比べると、さすがに味は落ちるが、まあ結構である。きなこは甘さ控えめで大豆の香りが強い自然食という味わい(糖尿でも大丈夫)、こちらも結構、結構と、最後にディスプレイケースの上に並んだプラスチックの入れ物に串を返して店を後にしたのである。さて、30年ぶりの大須観音の前へ、あの頃は父親を捨てた祖母(私は会ったこともない)から譲り受けた天白区のマンションが売れて、その手続きに大須観音の不動産屋に行った帰りのお参りだったなと、そして、その時のお金も出版事業に全て溶かしてしまったと、自分のバカさ加減と運命に今更ながら思いを馳せて観音様に手を合わせたのであった。さて、やることはやった(何を)と観音様の階段を降りると、ガーンと松重豊の五郎ではないがお腹が鳴るのであった。大須観音通りに入ると、2階建ての木造のシックな建物が眼に入る。「昔の矢場とん」と大きな赤字の看板が。あの味噌カツで有名な「矢場とん」の居酒屋部門らしい。こんな店があるのかと興をそそるが何とここも大行列で、こりゃ駄目だと、いかりや長介状態。まあ店はここだけではないと、観音通りをブラブラする。どうにも腹が減ったので、どこでもいいかと左右の商店が見渡すと、THE門前町という雰囲気の老舗寿司屋「大須寶寿司」を発見する。ディスプレイを見ると何とも良心的な値段。まさに、現在少なくなった古(いにしえ)の寿司屋である。若いのがいないので、混み具合も丁度良いなと暖簾を潜り、テーブルに腰を落ち着ける。こういう場所が落ち着く年齢になったのだなと、感慨深げに瓶ビールを注文。壁に掛かっている額の店名の上に明治35年創業の文字。ランチの取り合わせ寿司(770円)とチラシ寿司(880円)が間違いないだろうと注文。店の女将?と動きのスゴク遅い初老の女性が店を切り盛りしているが、それはお愛敬。カウンターの中の厨房ではご主人と中年男性が仕事に励んでいる。店は6割方埋まっているが、それでも仕切るのが大変そうである。これは時間がかかりそうだなと思うが、何も急ぐこともない、時間は一杯あると、大人の余裕、じっとお酒を飲みながら待つことにする。かれこれ20分ぐらいで、注文品が到着。取り合わせは江戸握りと揚巻(太巻きと稲荷-助六)が合わさったもの(コストの関係なのだろうが東京ではこの組み合わせはないだろうな)。名古屋らしい合理の寿司(イヤミです)である。ちらし寿司は、オオー昔こういうチラシ寿司を食べたなというような、酢飯の上に錦糸卵とさくらでんぶ(最近これは乗っかってないところが多いよね)をのせ、それぞれの種(エビ、ハマチ、アナゴ、玉子、マグロ)に煮切醤油がついているもの。この今様でなく安っぽいところが私好きである。そして、名古屋も刺身醤油(たまり)の店が多いが、ここは普通の醤油でありがたかった。しかし質はともかく、この値段で、これは安いかもしれない。ひょっとすると、明治創業から何も変わってないような気もするが、それも良いのである。何も奇をてらわない店がどんどん無くなっていく現在、頑張って持続していってほしいものである。そんなことを思いチラシ寿司を味わっているオジサンの姿は絵面がよかったのではないかと思う。

 さて店を後にして、栄町の宿まで徒歩で帰ろうと、今度は大須本通りを北へ、赤門通りへ歩進め矢場町方面へ向かったのであった。それにしても、どこもかしこも人だらけ、それも若いあんちゃん、ねーちゃんばかり、そして、名古屋は暑い、東京のように湿気はないのだが、陽の刺さり方異様なのである。身体中が汗でべとべとになり、極力人並を避けて亀歩きで宿に向かったのであった。目指す南大津通りがやっと見えてきたので、ひと休みしようと喫茶店を探していると、右手にスーちゃん(「寿がきや」のキャラクター)が見えるではないか、そう、この旅で絶対逃してはいけなかった「スガキヤ」のファストフード店に入るという目的を思いだしたのである。これは絶好なのである。

 No.57で「寿がきや」の即席めんをご紹介したが、実はこの「寿がきや」関東人には食品しか知られてないが、愛知(名古屋地区、尾張地区、三河地区)、静岡、岐阜、三重、滋賀、大阪、京都、兵庫と一府7県でラーメンチェーン店を主に展開しており、関西方面では即席めんよりもそちらのほうで有名らしいのである。

https://www.sugakico.co.jp/menu/

 ここではチェーン店を紹介するのはご法度としているのだが、「スガキヤ」を外してしまうことはできないのである。愛知県人にとって「スガキヤ」は、幼年期から親しみ続けた味で、自然に常に町にある、すでに無意識裡に浸透しまった空気のような存在なのである(言い過ぎかな)。それを証拠にあるアンケート調査では360人の愛知県人に「スガキヤ」のラーメンを食べたことがあるかと聞いて、ないという人は0人だったそうだ。現在「スガキヤ」の店舗は先述した一府7県に326店舗あり、そのほとんどは愛知県であるが、愛知県を歩いていれば、必ず「スガキヤ」にぶつかる可能性はメチャクチャ高いはずである。そして、オジサンも、念願? 叶い、とうとう「スガキヤ」に出会えたのである。

 目の前に出現した「スガキヤ(Sugakiya)」は、さっきほどの「大須寶寿司」とは対照の店構えのTHEファストフード店。普段なら絶対入らないだろうが、ここは勇気を出して店内突入。店内はファミリーや学生風の若い客で大賑わい、オジサンいたたまれなくなる。メニューはラーメン(トンコツ390円)、冷やしラーメン、ざるラーメン(季節限定)、あさりチゲ風ラーメン、チャーハン、鶏まぶし、甘味(ジェラートやあんみつ)があり、マクドナルドのようにメニューから商品を選択しカンターのお姉さん(東南アジア系小母さん?)に注文するシステム。私は当然ラーメン、それに暑いので抹茶氷(260円)を注文。長いカウンター席に座り、しばし待つ。オーダー品は奥の棚から出てくる仕組み。自分の番号が呼ばれ奥に取りに行く。さてと、スガキヤラーメンを特製ラーメンスプーンで実食。即席メンと変わらないらしいが確かに味は同じ、良く言えば癖のないソフィスティケートされたトンコツ味。悪く言えばだからどうしたという味(No.38「うまかっちゃん」に似てるかな)。東京人は1回食べたら次は…。寿がきやさんは東京に進出しないで、愛知関西で勝負をしているのは正解なのである。なぜ、この味がと思うが、良く考えてみると、しょっちゅう八丁味噌系の味に親しんでいると、こういった味が食べてくなるのではないか、という牽強付会な考えに達したのだが、如何だろうか。しかし、抹茶氷は大変おいしゅうございました。そんな機会もないだろうが、もうオジサンは入らないと思うが、小腹が空いた時にこんな店(休憩場所)が身近にあると若い人には大助かりだろう。因みに愛知大学や名城大学にも店舗を構えているらしい。寿がきや強しである(愛知では…)。そういえば東京で似たようなチェーン店で梅もと(こちらはそばとうどんだが)があったが最近見かけてないなあ…。

新雀 本店(しんすずめ)
ジャンル 和菓子
お問い合わせ:052-221-7010
予約可
住所:愛知県名古屋市中区大須2-30-10
交通手段:地下鉄鶴前線・名城線『上前津』駅より徒歩2分
大須観音駅から350m
営業時間
月~日13:00 – 19:00
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

大須寶寿司(おおすたからずし)
ジャンル 寿司、うなぎ
予約・お問い合わせ:052-231-3811
予約可
住所:愛知県名古屋市中区大須2-17-7
交通手段:名古屋市営地下鉄鶴舞線上前津駅8番出口から徒歩7分
大須観音駅から319m
営業時間
月~日
11:30 – 15:00
17:00 – 21:00
定休日 木曜日
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

スガキヤ 大須赤門店(Sugakiya)
ジャンル ラーメン、丼、中華料理
予約・お問い合わせ:052-261-0895
住所:愛知県名古屋市中区大須3-30-8 市野ビル 1F
交通手段:名古屋市営地下鉄、環状線、矢場町駅から歩いて10分
上前津駅から332m
営業時間
月~日
10:30 – 20:30
(L.O. 20:00)
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。