串カツ「串安亭」を出て、天神橋筋商店街を3丁目、2丁目、1丁目(天3、天2、天1)へとブラブラと見てるだけ歩きをしながら、活きている商店街は良いものだなと実感する。もうこんなこと言うのも手遅れかもしれないが、マーケットは縦に登っていくものではなく、横へ広がっていくものなのだと改めて気付いたのである。現在の百貨店の無様(ブザマ)さを見よ。平日、2階以上はガラガラすっからかん状態である。横へ広がりは否応なしに関心のない店舗も目がゆかざる負えないが、その無駄な瞬間があるからこそ、それが逆に我々の生活を豊かにしてくれるのである。色とりどりの店舗が並列に連なる、つまり縁日の出店のエロス感である。古本屋の隣にパチンコ屋があり銭湯がある、ポルノ映画館の隣に学習塾があったり、八百屋があったりする。横への連なりが我々の<生>の営みを活気あるものにしてくれていたのだが、この30年で、我々はその横の連なりを断ち切ってしまい、都市には田舎者の野心家だけが好きな、中身のないダサイ総合複合タワービルだけが増え、じっと10分もエレベーター待ちに費やし、地方では人々は郊外型のショッピングモールに集中し、整然と計画された大資本の可もなく不可もない店で、家族とのひと時をやり過ごすのである。楽で頭を使うことがないからである。そこには俄かな幸福感だけが漂っているのだが、決して面白い場所ではないなと皆内心は気づきはじめているのである。東京のお台場のショッピングモールがことごとく30年でソッポを向かれたように…。
そして、街には人がいなくなったのである。30、40年前と人口はそんなに変わらないのに、この日本中の人のいない感は何なのだろうと思う。
しかし、この商店街には人がおりまっせ。よろしおまんな。
そして感心するのは、この商店街、カオス感だけではなく、棲み分けもハッキリしているような気がするのである。天1~天3までが文化街、天4~天7が飲食街という感じである。嬉しいのは、天4から天1に南下していくと、「エンゼル書房」「栞書房」「矢野書房」「天牛書店」「ハナ書房」「杉本梁江堂」「フォルモサ書院」「駄楽屋書房」と8軒もの古本屋があり、どの古本屋もブックオフなどのチャラい古本屋ではなく、どれも重厚感があり、本の価値をちゃんと理解している<THE古本屋>感を臭わせてるから驚きなのである。あー時間があればゆっくりと見て歩きたいものだと思ったが、今回は時間がないので残念だかひと際重厚感を漂わせていた「天牛書店」にお邪魔する。店内入るとオシャレな雰囲気でブックカフェ風なので、どうなのかと思いきや、若いアンちゃんを誤魔化す、どうでも良い今風のアート本を置いてある蔦屋書店と違い、目利きがちゃんとしてある感がアリアリなのである。哲学、アート系なのであるが、こりゃドエライ古本屋なのではと…店内をグルリと巡る。素晴らしい完成度の古本屋である。欲しい本が幾冊もあったが、荷物になるので今回はあきらめたが、是非また訪問したいと思う。後と調べると、明治時代創業の戦前では大阪で一番大きな古本屋で、織田作之助の『夫婦善哉』にも登場している大阪では一番有名な古本屋だそうだ(天神橋店は2000年に開店。本店は吹田市江坂町)。やはりそうかと思ったが、元出版社の出版人が、そのことを知らなかったとは、何とも恥ずかしい限りなのである。そんなことはどうでもいいが、天2に行けば、あの上方の唯一の落語専門定席の「天満天神繁盛亭」※1がある。これだけでも、いかにこの天神橋筋の民度の高さが伺えるのである。時間があれば鑑賞したいものだが、何度も言うが時間がないので、次の上陸の機会にと諦める。商店を歩いていると、法被を羽織ったスタッフのかたが、チラシを配っているのを見かけたが良い風情である。
さて、本題のソウルフードだが、この商店街を歩いていると、全てがソウルフルだと、そんなもんどうでも良い気持ちなるが、ただ小腹が空いたのは確かであった。また天4方面に戻り、それでは、また、たこ焼きでもと、思ったら、ここにもあるのかと「わなか」が目の前に。すぐに目を逸らし、下調べをした大阪一うまいと言われる(ということは日本一、世界一ということか)「うまい屋」へ向かう。嘘か誠か、ここを大阪一という人が多いので、ここへ行かなければ話にならないだろうと、トボトボと天6方面に引き返す。天5と天6の境目あたりを左に曲がりすぐの所にありました店先でたこ焼きを焼き、中がイートインスペースの、<THE昔のたこ焼き屋>の「うまい屋」が。少したこ焼きを焼いているのを近くで眺めて、店内へ。おー飾りっけのないシンプルな店内に4人掛け卓子(テーブル)が五つあり、運よく若い学生4人とお綺麗な中年女性が1人。入ってすぐの卓子に掛ける。壁の木枠のメニュー表にはたこ焼き八個400円、12個600円と表示してあり、拙い数学の知識でも1個50円であることが分かる。イートインでは最低一人8個注文ということ、当たり前だはな、1個注文されても困るがな。でもいるのである、何もルールがないとそういう注文する恥知らずが、特に流行り病前の中国人観光客に多かった。飲み物はとメニューを見ると、何とビール(中)もあり(ビールにたこ焼きオツだね)500円、オレンジジュース200円、三ツ矢サイダー200円、コカコーラ200円、コーヒー牛乳130円、高山牛乳130円。
連れは三ツ矢サイダー、私は高山牛乳を注文するが、今時東京で三ツ矢サイダー(それも瓶)がある店ないんじゃないかと感動し、また高山牛乳というマニヤックなものが何でここにあるのか、ここの店は創業70年近く経っているらしいが、そもそも飛騨高山の出自なのかなと、いらぬ憶測をしてしまうのである。当然たこ焼きを16個注文してしばし待つ。それほど時間がかからず全品到着。三ツ矢サイダーと高山牛乳が笑えるのである。瓶の三ツ矢サイダーなど飲んだことないのではないか。高山牛乳は小さな可愛いスタンダードな牛乳瓶である。でもこういう店で、こいうのを飲むと、何故か旨く感じるものなのである。この高山牛乳、濃くて結構な塩梅でやんす。さて、たこ焼きである。ソースはあるが、他に青のりやかつお節などは置いてない、何ともシンプルで潔いではないか。現在形のたこ焼きをバカにしているようにも感じる。そんなことはない、こちらの方が先なのであるから。
早速、まずはソースをつけず口の中に、イイねをつい口走る。出汁が効いてイイのである。これは、そういえば東京の下町でも昔はこんなたこ焼きだったような気がする。次にソースを付けて食す。いくらでも食べられるような、飽きないたこ焼きである。というか、こういうのを我々はたこ焼きと言っていたのではないか。高山牛乳とも相性がイイのである。錯覚だと思うが明治と森永ではダメなのである。このたこ焼き三ツ矢サイダーと高山牛乳が一番合うのである(ホントかな)。これが老舗の味なのである。ひょっとするとキリンレモンに替えたこともあるだろうが、ダメだったのである。やっぱり三ツ矢サイダーだったのである。若い高校生風の男子たちはまさか自分たちが<日本一のたこ焼き>食べているとは知らずに楽しそうに頬張っている。中年女性は何度このたこ焼きを食べたのか、当たり前のように食べて、まさにたこ焼きの黒帯(そんなのいるか)、すぐに店を出ていった。お前は志ん生※2か。
若い女性は、このたこ焼きを新しいたこ焼きと言っているらしい。世の中は面白いもので古いたこ焼きが新しくなり、新しいたこ焼き(わなか他)古くなるのである。店を出るとなぜだか、まだたこ焼きが食べたくなり、すぐ近くの「べジ焼き本舗」の<たこせん>を買ってしまったのである。この<たこせん>もなかなかオツな味でした。(No.80につづく)
※1「天満天神繁盛亭」
2003年に上方落語協会会長に就任した桂三枝(後の6代桂文枝)が、天神橋筋商店街で落語会を行える空き店舗の提供を商店街側に依頼したことから、繁昌亭開亭の構想が始まる。商店街はこの依頼を大阪天満宮に持ち込み、上方落語協会も交えて話し合いを重ねた結果、天満宮用地に落語専門の定席を新設することで合意。
用地は大阪天満宮の寺井種伯宮司の厚意により無料で提供される。
1957年に戎橋松竹が閉場して以来、半世紀ぶりに大阪に寄席が復活することになった。立地場所は、1912年に吉本吉兵衛・せい夫妻が買収した「第二文芸館」の跡地の向かい付近にある。「繁昌亭」の名前は、6代目笑福亭松鶴の発案により千里中央のセルシーホールで上方落語協会が主催していた落語席「千里繁昌亭」に由来する。(ウィキペディアより)
※2志ん生
落語家の五代目 古今亭志ん生(ここんてい しんしょう、1890年6月5日 – 1973年9月21日)は、酒好きで、
うまい屋
たこ焼き、かき氷
お問い合わせ:06-6373-2929
住所:大阪府大阪市北区浪花町4-21
交通手段
・地下鉄堺筋線・谷町線天神橋筋六丁目駅13番出口から徒歩約3分
・JR天満駅徒歩5分
・天神橋筋六丁目駅から246m
営業時間 11:30~19:00
※売り切れ次第終了
日曜営業
定休日:火曜(祝日の場合は営業)
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。
ベジ焼本舗 天五店
お好み焼き、焼きそば
住所:大阪府大阪市北区天神橋5-8-30
交通手段
・地下鉄天神橋筋六丁目駅より徒歩5分
・JR天満駅より徒歩5分
・天神橋筋六丁目駅から237m
営業時間 10:00~24:00
日曜営業
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。