今回はソウルフードならぬソウルドリンク(ドリンクはフードの中に包まれますよね)をご紹介したい。酒飲みなら「デンキブラン」の名はご存じだろうが、何故、ソウルドリンクなのか? まずはこのドリンクの地域性にある。このドリンク(酒)、「神谷バー」という空間でしか飲まれていないと言っても過言ではないし、失礼を覚悟で言えば、他の場所で飲んでもあまり旨くない(言い過ぎかな)。この「デンキブラン」は浅草1丁目1番地1の「神谷バー」の1階、2階(なぜか3階の割烹で飲んでも旨くない)だけで、この世に浮かび立ち上がってくる、世界に例がないだろう稀有な不思議なドリンク(酒)なのである。「離即無、不離即有」この空間から離れてしまうと存在価値がなくなり、この空間の中にあると俄然存在価値が輝き増すという、禅の世界のようなドリンクがこの「デンキブラン」なのである。
それでは、そんな珍奇なドリンクはいつ頃いかようにできたのか。
明治13(1880)年神谷傳兵衛氏(茨城県牛久市の牛久シャトーも創設)が「みかわや銘酒店」を開業し、酒の一杯売りをはじめ、明治15(1882)年には速成ブランデー(現在の「デンキブラン」)の製造をはじめたというから、このドリンクすでに139年の歴史を持っている。製造から幾星霜、味も変化していったと思いきや、ほとんど変わってないらしい。
中身はブランデーベースのカクテルで、ブランデー、ジン、ワイン、キュラソー、そして薬草が配合され、材料の詳細、配合の割合は現在も社外秘となっている(これだけのアルコールが混在していれば、そりゃ悪酔いするわな)。
その頃(明治はじめ)は最新のものに冠する名称として「電気○○」が流行しており、発売当初は「電氣ブランデー」という名称だったが、その後、ブランデーではないことから現在の商標に改められた。その度数は当時45度と高く、口の中がしびれる状態と、電気でしびれるイメージとが一致していたためハイカラな飲み物として人気を博したそうだ。電気ブラン(30度)、電気ブランオールド(40度)の2種類がある。神谷バーのメニューでは前者をデンキブラン、後者を電氣ブランとしているとのこと。
この歴史を考えると、ひょっとすると、現在より広がり持ったお酒だった頃があったのだろうが、何故、浅草1丁目1番地1のドリンク(酒)になったのだろうか。確かに、現在でも「デンキブラン」をメニューに掲げている飲み屋はある。しかし、私は飲んでいる人を見たことがない。また私は飲んだが何故か旨くない。味が? そうでない。浅草1丁目1番地1で飲めば旨いのだから味がマズイのではないのは確か。ということは、「神谷バー」の空間に「デンキブラン」を美味しくする何かがあることになるが、それは何だろうか。やはり、歴史の中で、その独特の空間とそのドリンク(酒)が共振し合ってできた<気>が、別の空間では味わえない<旨味>を与えるのだろうとしか現在はいえない。私、ここで電気ブランオールドと生ビール(大)を各三杯飲み帰ろうと腰を上げようとしたら上げられずその後の記憶が翌朝までなかったことがある。テンションが上がる場所かもしれないが度を過ぎると(店はこのドリンク(酒)三杯までです)、デンジャラス(危険)なのでくれぐれもホドホドに。因みに初めて「神谷バー」で「デンキブラン」を飲んだ人は帰りに販売所で1本買って帰るといいでしょう(飲むと私の言わんとしたことが分かると思いますが…)。そして開けないでジョニ黒と一緒にサイドボード(そんなのあるか)に飾っておくことをお勧めします。「デンキブラン」は「神谷バー」から離れると<気>が萎んでしまう不思議なドリンクなので、「神谷バー」で飲んでください。浅草1丁目1番地1階のソウルドリンクに乾杯。
注)「デンキブラン」に炭酸を入れ、ハイボールにすると「神谷バー」から離れても旨い酒になるようになり、親離れした「デンキブラン」を味わえるようになったらしいのだが、確かに飲んだがそれは言えるかも?
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神谷バー (カミヤバー)
住所:東京都台東区浅草1-1-1 1F・2F・3F
交通手段
地下鉄銀座線浅草駅下車3番出口 徒歩0分
都営地下鉄浅草線浅草駅下車 A5番 出口徒歩1~2分
東武本線・伊勢崎線浅草駅下車 正面 出口徒歩1~2分
つくばエクスプレス浅草駅下車 A1番 出口徒歩約10分
浅草駅(東武・都営・メトロ)から41m
営業時間:11:30~22:00(L.O.21:30)
定休日:火曜日(祝日は営業で翌日代休)