No.26 埼玉県川口市「太郎焼とキューポラのある街」の幸福

 日本五大あんこ菓子と言われる(私の命名で、まだ普遍化されてません。)大福餅、どら焼き、大判焼、鯛焼き、最中。その中で大判焼ほどやっかいなものはなく、各地で呼び名が違い、一般的に何と呼んでよいのか分からないお菓子になっているが、全国で一番ポピュラーな大判焼というネーミングで五大に入れさせてもらった。私は東京もんなので、今川焼というネーミングに慣れ親しんでいるが、大阪、京都では回転焼き、北海道、青森、盛岡ではおやき、熊本では蜂楽焼き、兵庫では御座候、弘前では浅草焼き等、それほど型や中身が変わらないのに、地域や都道府県でこうもネーミングが違うお菓子があるだろうか。


 埼玉県川口市の「太郎焼」もそのひとつだが、これほどに地域に根ざした大判焼も珍しいのではと思い紹介させていただく。
 川口市といえば、私たちの年代(60歳以上)では映画「キューポラのある街」※(主演・吉永小百合、監督・浦山桐郎監督)で象徴されるように鋳物工場のある貧乏な街というイメージで、私の住んでいた足立区民にも馬鹿にされていた街であったが(しかし、川口市民も足立区民には馬鹿にされたくなかったと思う。何でお前らに馬鹿にされなくてはいけないのかと)、現在の川口市の変貌を見ると、時の流れは、複合的な作用で、対象をこんなにも驚くほどに変化させるのだという感慨にふけらざるをえないのである。また、川口市はプラスの方へ変化(ほんとうにそうなのかどうかはまだ分からないが)したが、逆にマイナスの方に変化(前に同じ)した街も多くあるだろうが、これを世の常というのかもしれない…。
 そんな、川口市を尻目に、変わらなく市民に親しまれているのが、この「太郎焼」なのである。まず川口市民で知らない人はいない名物で、川口の人は、お客さん訪れると、帰りにはこの「太郎焼」をお土産に勧めるらしいのである(ホントかな)。また駅の真ん前に店舗を構えているので、こりゃ買わざるをえないという強迫観念に駆られるように、つい手を出してしまうのがこのお菓子らしい。
 そして、「大判焼(太郎焼)」の作業工程が鋳物のそれと何となくアナロジックに重なり、街としてのDNAが、つい「大判焼(太郎焼)」へと向かわせてしまうのではと(これは私のただの妄想です)。
 それではと、どんなものかなと駅に降りて(そう言えば川口駅で降りるのははじめてである)、その「太郎焼」(170円)を一つ買って実食してみた。持った瞬間、高さがあり、重い。そんじょそこらの今川焼(縁日でテキヤが作る)とは違う(当たり前か)。中には餡がズッシリと、餡が主で皮が従状態。皮に印字されている紋様の三本線は川口の川を、中の◇は川口の口(川口市の市章)らしい。他に良くある今川焼より、餡の甘さが際立っているように感じる(甘さを抑えている餡もあるらしいー小倉)。これは旨いがなとお土産に追加で5個(850円)のチケットを買うため販売機に急いだのでした(ここはチケット制)。

 話は変わりますが、映画「キューポラのある街」は私の歴代映画ベスト10に入るほど好きな映画で、もう5回以上鑑賞しているのですが、今回ひょっとすると、川口でこんな有名な「太郎焼」なら映画に登場しているのではないかと、また観てしまいました。「太郎焼本舗」は昭和28(1953)年創業、映画は昭和37(1962)年公開ならと私の直観が働いたのである。じっと目を凝らして画面を眺めていると、おーっと川口東口のロータリーが現れ、出てきまし駅の横に「甘太郎」のネオン文字が?これはと感激するところが、こちらは「太郎焼」だが、ちと違うかなと、あー、「甘太郎」は100年も続く天津甘栗屋のことだと分かりがっくりと肩を落とす。ところがまた東口ロータリーが現れ、今度は主人公ジュン(吉永小百合)が子供を産んだ母親・トミ(杉山徳子)の退院の付き添いで、川口駅前を歩く場面で何か食べて‘帰ろうということになり、お店へ。それが何と「今川焼」と書かれた暖簾を掲げた店なのである。これはひょっとすると「太郎焼本舗」の前身ではと、勝手に思い込む私が…(違うな)。しかし、「キューポラのある街」は今まで多くの感動を私に与えてくれたのに(子役のサンちゃん<サンキチ>可愛かったな)、また、ここにきても、これだけの好奇心を私に掻き立させてくれたのである。そしてそれは「太郎焼」が創業から70年近く愛され続け、現在もまだ健在であったこその賜物であり、まさに「新しいものとは古くならないもの」のモデルようなお菓子と映画なのである。ずーっとこれからも市民に愛され続けるお菓子と映画がある川口市は幸福な自治体なのである。しかし、私は私の身体には一番<毒>だという甘味菓子を抱えて、罪悪感に浸りながら川口を後にしたのであった。糖尿じゃなきゃ10個は食べられるぜ。

※映画「キューポラのある街」-昭和37(1962)年、吉永小百合主演で公開された映画。舞台は江戸時代から鋳物の街として発展して来た川口だが、戦後の高度経済成長で、工場もオートメーション化で、昔カタギの職人の町にも時代の波が押し寄せる。旧来型の鋳物職人であるジュンの(吉永小百合)父(東野英治郎)は、働いていた工場が大工場に買収されたことからクビになってしまう。困窮に苦しむ一家だったが、主人公ジュン(吉永小百合)や弟のタカユキや弟の友達サンキチなどは明るく健気に力強く生きてゆく…。青春ドラマの傑作。監督浦山桐郎

太郎焼本舗
住所:埼玉県川口市栄町3丁目7−1
TEL:0120-66-3661
営業時間:10:00~20:00
定休日:火曜

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