2泊3日の大阪上陸も、早いもので本日の19時の新幹線に乗ることでエンディングを迎えることになる。そこで本日は、まず早めにホテルをチェックアウト。荷物を新大阪のコインロッカーに預け、日本一長い商店街・天神橋筋商店街を歩き、その後、必ずご挨拶をしなければならないと思っていた高津宮を参詣して、梅田を少し覗いて、新大阪で夕飯を食べてから、新幹線に乗り込むというプランを立てたのであった。その前にホテルの周辺の朝散歩と相成った。ホテルのある北浜(船場)地区は、東京の兜町のような株屋(金融街)の町。日本橋兜町が「シマ」と呼ばれるのに対し、北浜は「ハマ」と呼ばれているそうだ。そういえばどことなく、日本橋周辺のオフィス街にいるのと変わらないような。故に、なーんもエロスがない街なのだが、きょろきょろと街並みを見ながら亀歩きをしていると、京町のような木塀が連なっている一画が見えてきた。何かあるなと近づくと、何かの記念館で、横が細長い公園になっている。史跡案内の標(しるべ)を読むと、「緒方洪庵の旧宅及び適塾跡」記されている。おーここがかの有名「適塾」があった場所かと、それならば、あそこにある銅像は洪庵先生の像かなと近寄る。先生、正座しておるではないか。
この塾は大村益次郎や福沢諭吉を輩出した蘭学塾で、明治近代社会を作った立役者たちの塾。大坂は商人(商い)の町というイメージ(40万の人口の98パーセントが町人)だが、江戸時代の商人は、よく勉強したのである(身分的には低いために、その存在意義を示すために逆に勉強するようになった)。そういえ有名な懐徳堂(富永仲基を輩出)も心学明誠舎(井上宗甫設立)も大坂商人の町に出来たのである。大坂は「お笑い」だけでなく、文化・学問でも決して侮れないのである。
さて、ホテルを出て、新大阪に荷物を預け、早速、阪急千里線で天神橋筋六丁目駅へ向かう。駅を出るとすぐ天神橋6丁目商店街のアーケード街に出る。ここからズーっと1丁目まで長いアーケードの商店が続くのである。その全長が2.6キロメートル(7丁目商店街も入れてだが、7丁目にアーケードはない)というから驚きである。我が自宅近くの三ノ輪ジョイフル商店街とはどえらい違いである(比べるな)。全部歩ききって、40分ほどと言われているので、私の亀歩きでは1時間ぐらいかかる計算になる。驚愕を通り越して唖然としてしまうのである。この距離に店が連なっていて、「大阪のド根性みせてやるでー」という顔付で店を張っている感があってスバらしい。まずは6丁目から5、4、3丁目(丁目省略)商店街まで店を素見(ひやか)して歩く。店の多さに頭が混乱し、カオス状態になる。人通りも、どこぞのシャッター通りとえらく違い大賑わい。6から5分ほど歩く5と4の途中に天満駅があり、この駅前が天神橋筋商店街と謳われ、マーケットが密集凝縮している。ここもまた好奇心がそそられる場所である。
さて、昼飯は、今度はほんまもんの大阪のお好みか、それとも、寿司屋通りと言われている通りで大阪の江戸前寿司でも食べようか、と思案に暮れていると、串カツ屋(串揚げ?)が視野に現れる。大瓶ビールセット(大瓶ビール+串カツ4本)500円、(大瓶ビール+串カツ6本)800円、Wセット(生中2杯+串カツ6本+本日の一品)1,000円(全て税込み)の看板に心が揺れてしまう。ここで、新世界の串カツ屋のリベンジをするべきではないか。1件行っただけで、大阪の串カツ屋を云々するのは、批評家として誠実ではないのではないか、と物書きとしての良心がぐらつきだし、そして足はすでに店の入り口に向かっていたのであった。店名は「串安(くしあん)亭」。くしやすのほうがいいのになー。そんなに古い店ではなさそうである。店に入ると8人ぐらい座れそうなカウンターがあり、奥に深く4、5人掛けのテーブル席が5つほどある。開店早々で、お客はまだ誰もいない。一番奥のテーブルに案内される。周囲の壁に単品メニューなどのお品書きが貼ってある。まずは早速、大瓶ビール+串カツ6本セットを二つ注文。それに気になったどて煮を注文して、まずはそれで様子見をする。瓶ビールが到着。何とキリン一番搾りの大瓶(633)、これ東京では出すところないのでは。というか最近は東京で633の大瓶を出す所が少ない(大瓶と謳いながら中瓶―何ともセコイ)、この点は大阪は、必ず大瓶が633なのが素晴らしい(大阪の勝)。ビールで喉を潤していると、どて煮が到着。大阪は東京の煮込みのようなもは少なく、どて煮を出すところが多い。可もなく不可もなくのお味で、やはりどて煮は愛知の八丁味噌が合う(愛知の勝)。そうこうしているうちに、串カツ到着。残念だが、ここは二度付け禁止のウスター池はなく、流行り病の影響か直接付けるタイプ。串カツがステンレス皿に乗っかってご登場。種はイモ、ナス、玉ねぎ、うずら、豚、レンコン。まずは、ソースをかけナスを食す、次に豚、油もしつこくなく、豚も臭くなく、いい塩梅に揚がっている。新世界の店(No.67)よりも、こりゃ良い。レンコンもイモも悪くない。素材が新鮮なような気がする。追加で、紅ショウガと海老を注文。連れはレモンサワー(380円)で私はメガジンビームハイボール(500円)を所望。紅ショウガと海老を〆に食べて、お勘定をしてもらう。値段は安い(串カツ単品でも100~150円)が味はなかなかで、もっと飲み食いしたいところだが、まだまだ出来上がってはいられないのである。ぐっと我慢して店を出たのであった。やはり観光地より日常の地域密着型の飲食店の方がレベルが高いのか、気が付けば店はお客で一杯、ほんまに串カツ好きなんですね、大阪人は。蛇足ですが、オジサン串揚げは半年に一度、東京の北千住の「天七」でチューリップと紅ショウガで生ビールを飲めば、それで満足である。ましてや「串カツ田中」なぞには入りません(ほんとうに蛇足でした)。それより疑問がひとつ、大阪は串揚げではなく、すべてを総称して串カツというのでしょうかね。(<No.75>につづく)。
ジャンル:串カツ、居酒屋
電話:06-6354-9494
予約可否
住所:大阪府大阪市北区天神橋4-6-25
営業時間
[月~金] 16:00~22:00(L.O.21:30)
[土・日・祝] 11:30~22:00(L.O.21:30)
日曜営業
定休日:不定休