現在そば屋には、1.高級そば屋(お酒の後にそばを啜る)、2.大衆そば屋(昼食等、空腹を満たすための食べるそば屋)、3.立ち食いそば屋(ファストフード)と三つの形がある。
2と1の違いは、座るか立つかの違いと、そのモノの質の違いだけかもしれないが、この三つは全然違ったもので、同等の立ち位置でウマいマズいを語ってはいけないのではと思うのだがどうであろう。そもそもお互いの土俵が違うのだから、同じ視点で比べてしまうのは間違いなのである。こういうことはそば屋だけでない様々な分野で最近多くみられるので、自分も注意したいと思う今日この頃である。
枕(マクラ)が長くなってしまったが、本日は、私が60年の人生で一番通っている立ち食いそば屋を手前勝手ながら紹介したい。ただ贔屓にしているからといってご登場願ったわけでなく、ここのジャンボゲソ天そばは、すでにこの地域のソウルフードになりつつある、いや既になっていると思ってのことである。
そして私はこの「一由そば」は、日本で一番企業努力している立ち食いそば屋だと思っている。その理由は、大都市にスタンドそば(ガラスケースの中にたくさんの種類の天ぷらが置いてあり、そばかうどんを選択した後、その中から自分の好きな天ぷらをチョイスして載せてもらう方式の立ち食いそば屋-六文、スエヒロ系とも言う)は数あるが、これだけ天種が豊富な店はないだろう。何せ、お客が天種のリクエストを紙に書いて投票すると、可能なものは期間限定でテスト採用し商品化してくれる。そしてリクエストした天種が好評なら定番化されるというダイナミックなシステムなのである。ピザ天、スパイシーとり天、納豆天、かき天、JKB(ジャンボかきあげB―ゲソ、紅生姜、ネギ)等、多くの天種がケースに並び、群雄割拠、消え去ったもの、生き残ったものの悲喜交々がケースの中で展開されるのである。また嬉しいのは、天種をハーフ(半分)にしてくれて、様々な天種を楽しむことができるようになっている。そばは中太麺で汁は六文系のパンチの効いた黒く濃い東京汁。最近、コシの強い田舎そば風『太蕎麦』(上写真参照。太麺ジャンボゲソ、キツネ入り)が登場して人気を博しているが、私ももっぱらこれであるが(期間限定だったが、定番になったのだろうか)、よくぞ出してくれたとオーナーには頭が上がらないのである。このオーナーは六文系のスタンドそばの出身だが、六文系を進化させ、日本の立ち食いそばを活性化させた功労者であることは間違いないだろう。
そんな、多くの天種がある「一由そば」の中でも他の追随を許さず大人気なのが、ジャンボゲソ天なのである(紅ショウガ天が猛追しているが)。お客の6割がこのゲソ天(普通とジャンボあり―違いは大きさだけなのだが、何故かジャンボを注文してしまう)を注文するのではないか。ケースの中と後ろの流しの横には積み上げられたゲソ天がいつも置かれている。
このゲソ天、ゲソを刻んで揚げてあるのだが、程良い大きさでゲソを噛み切ることがなく、香ばしく硬く揚げてある衣と相まって、独得の味を醸し出している。またそれが汁に沁みこんでいくと同時に、一段と風味が出て、そばと絡まると「旨い」というより「好いよ」という言葉がでてくるような一品なのである。そして、これが360円(かけそば200円+ジャンボゲソ天160円)という安さで食べられるのだから満足しないわけがないのである。
私はジャンボゲソ天そばを初めて食して10年になるが、何故か日暮里方面に足を運ぶと、薬(ヤク)のフラッシュバックとはこの様なことなのかなと思うほど、このジャンボゲソ天そばの味が甦って食べざるおえなくなるのである。一度隣で食べていた浦和に住む盛岡出身のオッサンが、東京に帰るとこのゲソ天そばが食べたくなり、つい日暮里で下車してしまうと店員に語っていたが、それもむべなるかななのである。
ああーこんなことを書いたらまた食べたくなった。原稿を書き終わったら「一由そば」へ直行だな。本日は熱いから太麺冷やしにJKBかな、それでは失礼。。
※因みにジャンボゲソ天、何度かテイクアウトして食べたが、何故だか店で食べるほどウマくないのである。持ち帰るよりもお店で食べることをお勧めします(前回のデンキブランほどではないですが…)。
一由そば HP
住所 :東京都荒川区西日暮里2-26-8
交通手段:日暮里駅から徒歩5分
尾久橋通りからちょっとはいる日暮里駅から294m
電話:03-3806-6669
営業時間:5:00~20:00(L.O.19:50)
日曜営業
定休日:無休 ※年始・夏季休業あり