No.67 大阪府大阪市の新世界「串揚げ」、こりゃアカンで、亀親父。(大阪上陸編2)

 ソウルフードと呼ばれるのに一番肝心なのは、その地域性にあると思われる。その限定された範囲内で、何故にこんなに、あるフードが食べられ続けているのか? その特殊性を伝えることにより、日本の食文化の豊饒性を楽しんでいただければ、この企画は成功なのではと思いながら記事を書いてきた。そして、書きながら気づいたのは、その限定された範囲が小さければ小さいほど、フードはより際立ってくるということだった。
 ところが、この大阪の<食>だけは、他の地域のソウルフードと差異があるのである。例えば、「お好み焼き」「たこ焼き」「串揚げ」のような粉もんソースもの。これ、どこへ行っても食べられ、限定範囲は広いのだが、何故か「焼き餃子」のようなメジャー食の広がり感はなく、関西(特に大阪)特有の地域性を漂わせているように感じる。まあーこれが大阪の粉もん文化と言われる所以なのだろうが…。
 今回の私の上陸の目的は、ほんまに、大阪の粉もんソースものは、そんなに他の地域に比べると旨いんかという、かねがね抱いていた疑問の解消でもあったのである。
 まずは、「串揚げ」を食べずして、大阪の食文化は語れないと思い、新世界の「No.66三吉うどん」を食べた後は、またぶらぶらと新世界をお散歩し、「串揚げ屋」を物色しながら歩きだす。散歩しながら感じたたのは、この新世界、何と飲食店の多いことよ。東京の〈食の街〉浅草でさへ、こんな飲食店が密集してないぜと叫びたくなるほどの異様な光景である。飲食店の間に申し訳程度に小さな娯楽施設(パチンコ、ゲームセンター、射的場等)があるといってもよいだろう。その中でも、大丈夫かよというほど「串揚げ」店が軒を連ねているのである。「八重勝」「てんぐ」「元祖串カツだるま」「近江屋」等大所から小店(こだな)まで、どこへ入店したらよいのやらと、行列ができている店、客が疎らな店、様々でクラクラしてしまうのである。行列の店は、さすがに旨いのだろうと推測するが、今回は2泊3日でも弾丸ツアー的なところがあるので、並んでいる余裕などないな、とちょいと躊躇っている時、ふっと、そうだ、ボクシングの亀田兄弟のヤクザ親父(失礼)が YouTubeで「近江屋」を紹介していたのを思いだす。彼ら親子のお膝元の浪速地区だし、間違いはないだろう、そしてあの親父に不味いものを食わせたら彼の味覚はともかく、暴れてしまいそうなので、ひょっとすると良い店かもと危険な憶測ながら「近江屋」をチョイスすることにした。通天閣まで行く、メインストリートの本通り商店街の路地を右に曲がると、居酒屋風の「近江屋」が店を構えており、早速入店。お店の人から、「本日は14時から団体が入るので90分しかないが、良いか」とのこと、「OK、OK」とカウンターの端に着席したが、ふっと亀田の親父の食べていた光景と雰囲気が違うのに気づく。メニューを見ながら周囲を見渡し、あらら、こちらは「近江屋」の別館だということに気づく。慣れない場所である。こういうこともあろうかと、まーそんなに違いはないだろうと、我慢しながら、瓶ビールの大瓶(570円・633)を注文。居酒屋風だから様々なメニューがあるのだろうと思いきや串揚げ一点張りの潔さ(大阪の場合串揚げ屋はどこもそうなのであろうか)。串カツは90円とサービス値段、他の種はうなぎ、えび、貝柱、とりから、たこから290円を筆頭に玉ねぎ、いも、うずらの玉子、ウィンナーが130円という普通?価格。まずは素人だから串カツ盛り合わせ6串1,080円と野菜フライの盛り合わせ5串930円を注文。ビールを飲みながら、定番突き出しキャベツを、これまた定番の二度付け禁止の容器に入ったソースに浸しながらつまむ。ソースは濃いめだがしつこくはない。ここの衣はアメリカンドックのようにフワフワなのが特徴と亀親父に聞いていたが、どんな串揚げがでるか期待しながら、しばし待つ。10分ほどでゾクゾクと串揚げがステンレストレーに運ばれる。かつ、えび、ほたて、きす、ぶた、いか、しいたけ、れんこん、小なす、玉ねぎ、すなずり、大体こんなところだろうと予想するが中に曖昧なものが…。確かに衣がふっくらとして、それをソースに浸すと染み渡り、今まで食べた串カツとは幾分違うような気がする。だが私の好物の紅ショウガがないのである(本場だろうに)。そして、串揚げのカツの肉に少々臭みが? これは冷凍かと思わせるような独特な匂い。案の定、厨房では凍った肉を捌いているのである。こりゃイカン。今時、東京の店では、こんなハッキリと冷凍ものだとわかるようなものを出す店は少なくなったが、大阪人はこれを旨いと…。串カツなどはソースに浸しちゃえば分からせんとでも思っているのか、いくらなんでも食い倒れ大阪と豪語しているのだから、何かの間違いだろうとは思うのだが(他は違うと願いたい)…。おい亀親父お前の舌は大丈夫なのか。やはりこの新世界も浅草と同じような観光地、平日はあまり人がおらず、土日の一見さんばかり相手にしているため、客を舐めたところがあるのかもしれない。初発(スタート)からこれではマズイだろうが、大阪食い倒れ、と呟きながら、目指すあいりん地区西成へと向かったのであった。

近江屋 別館
ジャンル:串揚げ・串かつ、居酒屋、和食(その他)
電話:06-6636-1194
予約可
住所:大阪府大阪市浪速区恵美須東2-4-18
交通手段
JR関西本線新今宮駅、地下鉄動物園前駅より徒歩4分
新今宮駅前駅から356m
営業時間:12:00~21:00(L.O.20:30)
日曜営業
定休日:木曜日