小学生の時、父親がよく埼玉県の所沢に行く機会があり、その時に必ずお土産に買ってきてくれたのが「焼きだんご」だった。醤油団子は「みたらしだんご(醤油餡)」しか知らなかった私は、醤油をつけてそのまま焼いた素朴な「焼きだんご」の味に感動し、父が毎日所沢に行ってくれないかなどと思ったものである。今でこそ、この素朴な醤油だけの「焼きだんご」は身近で買えるようになったが、その当時はなかなか東京の下町では出会えなかったのである。
それから幾星霜たち、今度は、私がアルバイトで入間市に行く機会があり、すっかり忘れていた「焼きだんご」に出会うことになる。そして、よくお土産にこの「焼きだんご」を買って帰るようになるという、私にとっての縁起ものの「だんご」なのである。
今度この企画で、真っ先に取り上げようと思ったのであるが、やっとこ飯能へ行く(No.13「武蔵のうどん」で紹介する予定)機会ができ、ついでにではないが埼玉県西部地区の「焼きだんご」も買うことができたしだいである。そもそもこの「焼きだんご」、当時この地区の農家では自家用として陸稲(おかぼ)を栽培していてのだが、硬質米(水穂は軟質米)のため冷たいご飯になると固くてぽろぽろしてしまった。そこで考えられたのが米粉(粉末)にして、「焼きだんご」にするという方法だった。自家用石臼で、荒挽きした米粉には歯ごたえや甘味が醸し出され美味となり、これがこの地区の「だんご」となって定着したのだという。また明治の頃には「焼きだんご」の組合ができ、「焼きだんご」の味を守るため、作り方を「申し合わせ事項」として定め、「だんご」の品質保証をしていたらしい。尚、現在では、「だんご」は当然白米をひいた米粉が使用されているそうだ。
私が訪問した「和菓子屋」は狭山市笹井の「小嶋屋」さん。この店入間、狭山市周辺ではかなり有名で、美味しいというのを聞きつけて元寄りの入間市駅で降りる。駅から1,700メートル、歩いて14分と書いてあってので、私の亀歩きだと40分だなと予測したのだが、遠いこと遠いこと。駅から出て入間川の豊水橋を渡り、左の土手の笹井河川敷公園の道をまっすぐ道が終わるまで進み、向かいの住宅地に入ると目指す「小嶋屋」を発見。注意深く見てないと通り過ぎてしむような普通の民家。お客さんが2名、注文品ができるのを待っている様子。工場の入り口に向かっていくと、ちょうど愛嬌のある女性(店員?お嬢さんか?)が出てきてひと安心、「焼きだんご」4本と「酒まんじゅう」2個を注文。「焼きだんご」は注文を聞いてから焼くと知っていたので椅子を借りて待つことにする。10分で袋にお目当ての品を入れ渡してくれた。さすができたて、温かい。その場で食べようかと思ったが気が引け、お嬢さんに狭山駅までのバス停の場所を聞いて、そこまで歩きながら1本だけ食べることにする。
まずは包みを開くと醤油の焦げた匂いが鼻に、「だんご」を口の中へ、柔らかいそして粘りもある。「武蔵のうどん」を食べた後のデザートにピッタリ?だった。残りは一つ自宅に帰って飯能で手に入れた「狭山茶」と一緒に食べようとリックにしまう。
なぜ「狭山茶」と一緒なのか、この「狭山茶」まさに「焼きだんご」とともにこの地区のソウルフードと言ってもさしつかいないと思うからである。
寒冷地で育つ「狭山茶」は生産量が少なく、人口の多い都市近郊に生産地があるために、ほぼ地産地消で終わってしまうマイナー茶なのである。「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」といわれるほどの日本三大茶の一つにもかかわらず、他の地域の人が「狭山茶」を飲むためには現地のお茶屋に直接購入するしかないというスバラシサ(西方<にしかた>の人は飲んだことないのではないか)。極めつけは、茶産地としては特殊な「自園自製自販(自茶園で収穫した茶葉を自分で製茶して販売する)」という形態の個人経営のお茶屋が多く、それぞれのお茶屋がそれぞれ育てた茶園で、それぞれこだわりの製茶をしているため、同じ狭山茶でも店舗によってかなり味わいが違うといったまさにお墨付きのソウルフルなお茶なのである。ソウルフル2点セットのおやつの時間などなかなか体験できないが、ここの地区の人はこれが日常、羨ましいかぎりである。
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小嶋屋本店
住所:埼玉県狭山市笹井1-35-5
入間市駅から1,702m
営業時間:8:00~18:00頃(要確認)
定休日:木曜日
電話:04-2953-3965
予約可